Description of a work (作品の解説)
2008/04/04掲載
Work figure (作品図)
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レ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山(デ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山)

 (La montagne Sainte-Victoire) 1904-1906年
73×91cm | 油彩・画布 | フィラデルフィア美術館

後期印象派の巨匠ポール・セザンヌ晩年の代表作のひとつ『レ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山』。本作は画家の故郷である南仏の小さな町エクス=アン=プロヴァンス(以下エクス)にそびえる岩山であり、セザンヌが生涯で手がけた風景画の中で最も頻繁に取り組んだ画題でもある≪サント=ヴィクトワール山≫を描いた作品である。1900年以降のセザンヌ最晩年期に制作されたサント=ヴィクトワール山を画題とした作品では、エクスの町の北方にある丘陵地帯≪レ・ローヴ(デ・ローヴ)≫の丘の頂上からの視点での制作に精力的に取り組んでおり(画家はレ・ローヴの丘の中流地帯にアトリエを建てており、現在までに本視点からの作品は7点確認されている)、本作はその代表的な作例のひとつである。形体と色彩が分離し、抽象化された遠景のサント=ヴィクトワール山や前景の田園風景など対象の調和的表現や、平面化(単純化)されながらも複雑で繊細な調整が施された絶妙な空間構成は、セザンヌが最晩年に辿り着いた風景画における表現手法の極致である。また画家自身は、この連作的なサント=ヴィクトワール山の作品の色彩について「地平線と平行する線は、神が目の前に与えた自然の一部であることを表し、垂直な線はそれらに深みをもたらす。この風景の中に空気を感じさせるには、赤や黄色で表現する光の振動の中に、十分な青味を加える必要があるのだ」と述べており、本作からもその色彩展開が実践されていることがよく理解できる。なおレ・ローヴからの視点でサント=ヴィクトワール山を描いた他の作品では、バーゼル美術館が所蔵する『レ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山』や、本画題を描いた最後の作品でもある、より重々しい雰囲気の『レ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山(プーシキン美術館所蔵)』などが知られている。

関連:バーゼル美術館所蔵 『サント=ヴィクトワール山』
関連:プーシキン美術館所蔵 『サント=ヴィクトワール山』


【全体図】
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遠景にそびえるサント=ヴィクトワール山。本作は画家の故郷である南仏の小さな町エクス=アン=プロヴァンス(以下エクス)にそびえる岩山であり、セザンヌが生涯で手がけた風景画の中で最も頻繁に取り組んだ画題でもある≪サント=ヴィクトワール山≫を描いた作品である。



【遠景に聳えるサント=ヴィクトワール山】
光の描写の中に加えられる青い色彩。画家自身は連作的な本作品群の色彩について「この風景の中に空気を感じさせるには、赤や黄色で表現する光の振動の中に、十分な青味を加える必要があるのだ」と述べている。



【光の描写の中に加えられる青い色彩】
抽象化された近景の田園風景。形体と色彩が分離し、抽象化された遠景のサント=ヴィクトワール山や前景の田園風景など対象の調和的表現や、平面化(単純化)されながらも複雑で繊細な調整が施された絶妙な空間構成は、セザンヌが最晩年に辿り着いた風景画における表現手法の極致である。



【抽象化された近景の田園風景】

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