2009/07/23掲載
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温室のセザンヌ夫人(Mme Cézanne dans la serre) 1891-92年頃 92.1×73cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館
やや物悲しげながらほぼ無表情のセザンヌ夫人。本作は画家の妻である≪オルタンス・フィケ≫をモデルに制作された人物画作品で、セザンヌが妻オルタンスを画題とした作品を生涯の中で複数枚(20点前後)手がけているが、本作はその中でも特に代表的な作品のひとつとして位置付けられている。
【ほぼ無表情のセザンヌ夫人】
残された未処理部分などが示すよう未完成である本作。画面下部の未処理部分など未完成ではあるものの、画家の作品の中で特に重要視される本作で最も注目すべき点は、考え抜かれた画面構成や構図の見事さと、主対象(セザンヌ夫人)と他の構成要素(背景)との連動的関係性による、穏やかで妻への愛情に満ちたセザンヌの個性を感じさせる表現にある。
【画面下部の未処理部分】
本作の印象を決定付ける明瞭な色彩。3点の植物に用いられる緑色と色彩的対比を示す明瞭な黄土色、そしてそれらが合わさる背景的要素の色彩とセザンヌ夫人の身に着ける衣服の黒色は、本作の調和性とその印象を決定付ける役割を果しており、薄塗り的な独特の筆触はそれを強調することに成功している。
【印象を決定付ける明瞭な色彩】 |