Description of a work (作品の解説)
2009/01/07掲載
Work figure (作品図)
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サント=ヴィクトワール山と大きな松の木


(La montagne Sainte-Victoire au grand pin) 1885-87年頃
66.8×92.3cm | 油彩・画布 | コートールド・コレクション

近代絵画の父ポール・セザンヌを代表する風景画作品のひとつ『サント=ヴィクトワール山と大きな松の木』。本作はセザンヌの故郷であるエクス=アン=プロヴァンス(以下エクス)の東に位置する≪サント=ヴィクトワール山≫を、画家の生家ジャ・ド・ブーファン近郊からの視点で描いた風景画作品である。1880年代以降のセザンヌの作品としては非常に珍しく署名の記された本作(※この署名は同郷の友人である詩人ジョアシャン・ガスケへ返礼的に記された)では、中景にエクスを流れるアルク川地域の穏やかな風景が広がっており、遠景には青く染まったサント=ヴィクトワール山が堂々と構えている。そして近景として画面左側に古典的でありながら唐突な配置には日本の浮世絵の影響を感じさせる大きな松の木が配されており、その枝葉は画面上部全体へと広げられている。本作の計算された秩序的な構成や技巧的描写なども特に注目すべき点であるが、本作で最も注目すべき点は画題である松の構造的連続性と色彩の調和的表現にある。画面左側に配される松の大樹は(特に幹の部分で)明確な存在感を示しているものの、枝に茂る針葉は空の青灰色と調和するように描かれている。また針葉の鮮やかな緑色は(サント=ヴィクトワール山を挟み)明らかに中景のアルクの風景に広がる田畑と呼応しており、色彩的な統一感と構成要素同士の連動性を生み出すことに成功している。また下地に塗られた明灰黄色を活かした、やや淡白で平坦的な調和的色彩表現にはセザンヌの画家としての革新性を見出せると同時に、故郷の情景に対する(セザンヌが抱いていた)深い敬愛の念をも感じることができる。なおセザンヌは『松の大木があるサント=ヴィクトワール山』を始め、本作と類似した同主題の作品を水彩・油彩合わせて複数手がけていることが知られている。

関連:『松の大木があるサント=ヴィクトワール山』


【全体図】
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遠景に広がるサント=ヴィクトワール山の堂々とした姿。本作はセザンヌの故郷であるエクス=アン=プロヴァンス(以下エクス)の東に位置する≪サント=ヴィクトワール山≫を、画家の生家ジャ・ド・ブーファン近郊からの視点で描いた風景画作品で、本作には1880年代以降のセザンヌの作品としては非常に珍しく署名の記されている。



【サント=ヴィクトワール山の姿】
画面左側へ唐突的に配される松の大木。中景にエクスを流れるアルク川地域の穏やかな風景が、遠景には青く染まったサント=ヴィクトワール山の風景が描かれており、そして近景として画面左側に古典的でありながら唐突な配置には日本の浮世絵の影響を感じさせる大きな松の木が配されている。



【唐突的に配される松の大木】
中景として描かれたアルク川地域の穏やかな風景。下地に塗られた明灰黄色を活かした、やや淡白で平坦的な調和的色彩表現にはセザンヌの画家としての革新性を見出せると同時に、故郷の情景に対する(セザンヌが抱いていた)深い敬愛の念をも感じることができる。



【アルク川地域の穏やかな風景】

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