Description of a work (作品の解説)
2008/11/25掲載
Work figure (作品図)
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アヌシー湖

 (Le Lac d'Annecy) 1896年
65×81cm | 油彩・画布 | コートールド・コレクション

近代絵画の偉大なる巨匠ポール・セザンヌの代表的な風景画作品『アヌシー湖』。本作は1896年7月、休暇目的で妻子と共にオート=サヴォア県(スイス近郊でもある)タロワールのアヌシー湖を訪れた時に制作された作品である。本作には画家がそれまでに殆ど取り組まなかった、典型的で崇高な(セザンヌ自身の言葉を借りると「つまらない」)アヌシー湖のピクチュアレスク的風景を、造形的視点で再構成し、絵画としての新たな自然的調和を構築しようする画家の取り組み(挑戦)が良く示されている。近景として画面左側に一本の大きな樹木を配し、中景となるアヌシー湖を挟んで遠景には小さな古城や険しいアルプスの山々が描かれている。画面左側の樹木の枝葉は遠景(の空)と溶け合うかのように渾然一体となっており、もはやそこに(古典的絵画の基本となる遠近法的な)距離感は感じられない。また画面全体を通して、ほぼ統一的な粘性の感じられる四角い幅広の筆触で描写されており、観る者に一定の造形的(直線的)な秩序(統一性)のある印象を与えている。さらに色彩表現においても多様な青色と緑色など寒色を主色とし、さらに相対的な強弱として朱色(遠景の古城や家の屋根など)や黄土色(近景の木の幹や遠景の山肌)を用いて色彩に変化を与えている。画面全体はピクチュアレスク的な静謐性に溢れているものの、本作に示される造形的表現への挑戦や対比的な色彩の使用には、その後の画家の風景画における絵画様式の典型を予感させ、そのような意味でも本作はセザンヌの風景画作品の中でも特に注目すべき作品として重要視されている。


【全体図】
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遠景に描かれるアヌシー湖の古城。本作には画家がそれまでに殆ど取り組まなかったピクチュアレスク的風景を、造形的視点で再構成し、絵画としての新たな自然的調和を構築しようする画家の取り組み(挑戦)が良く示されている。



【遠景に描かれるアヌシー湖の古城】
アヌシー湖に反射するタロワールの風景。画面全体を通して、ほぼ統一的な粘性の感じられる四角い幅広の筆触で描写されており、観る者に一定の造形的(直線的)な秩序(統一性)のある印象を与えている。



【湖に反射するタロワールの風景】
近景として描かれる一本の大きな樹木。画面左側に配される存在感の大きな樹木の枝葉は遠景(の空)と溶け合うかのように渾然一体となっており、もはやそこに(古典的絵画の基本となる遠近法的な)距離感は感じられない。



【近景として描かれる一本の大きな樹木】

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