Description of a work (作品の解説)
2007/11/30掲載
Work figure (作品図)
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オペラ座の黒衣の女(オペラ座にて)


(Woman in Black in the Opera) 1879年
81.3×66.0cm | 油彩・画布 | ボストン美術館

アメリカ出身の女流印象主義の画家メアリー・カサットの代表的な作品のひとつ『オペラ座の黒衣の女(オペラ座にて)』。本作に描かれるのは、当時の女性らが最も華やかに映える場所のひとつであった劇場でオペラを鑑賞する女性で、カサットが本作を手がける5年前(1874年)に印象派の巨匠ルノワールが『桟敷席』として本画題を描いており、しばしば『桟敷席』との関連性や対照性が指摘されている。ルノワールの『桟敷席』に描かれるオペラを鑑賞する女性は、胸元に薔薇が一輪添えられる白と黒の華やかな装いで画面を観る者に視線を向けているのに対し、本作でオペラを鑑賞する女性は、性別的強調の少ない(又は皆無な)黒衣に身を包み、一心に舞台上へと視線を向けている。また黒衣の女性が左手で握り締める扇は固く閉じられており、女性の優美さや華やかさを演出する道具としては全くその役割を果たしていない。さらに『桟敷席』で女性の背後に描かれた、おそらくは女性又は有名人が座る他の桟敷席の観客を眺めている男性は、本作でその目的がより明確にした、黒衣の女性へと視線を向ける画面奥の男として描かれている。これらはカサットが本作で示した、当時の男性社会への明らかな挑戦とオペラ鑑賞の場での男性への軽蔑に他ならない。表現手法の点においても、前景(黒衣の女性)と後景(画面奥の桟敷席)の対比的構築や色彩構成、印象派の始祖的存在であるエドゥアール・マネを思わせる大胆な黒色の使用、流動的でやや荒々しい筆致による印象主義的な展開など画家の更なる表現的躍進が感じられる。なお本作は米国で初めて展示された画家の印象主義的画題の作品と考えられている。

関連:ピエール=オーギュスト・ルノワール作 『桟敷席』


【全体図】
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一心に舞台上へと視線を向ける黒衣の女性。ルノワールの『桟敷席』に描かれるオペラを鑑賞する女性は、胸元に薔薇が一輪添えられる白と黒の華やかな装いで画面を観る者に視線を向けているのに対し、本作でオペラを鑑賞する女性は、性別的強調の少ない黒衣に身を包み、舞台上へと視線を集中させている。



【一心に舞台上へと視線を向ける女性】
黒衣の女性を眺める他の桟敷席の男。『桟敷席』で女性の背後に描かれた男性は、本作でその目的がより明確にした、黒衣の女性へと視線を向ける画面奥の男として描かれており、カサットが本作で示したのは、当時の男性社会への明らかな挑戦とオペラ鑑賞の場での男性への軽蔑に他ならない。



【黒衣の女性を眺める他の桟敷席の男】
固く閉じられた黒衣の女性が握る扇。表現手法の点においても、前景(黒衣の女性)と後景(画面奥の桟敷席)の対比的構築や色彩構成、印象派の始祖的存在であるエドゥアール・マネを思わせる大胆な黒色の使用、流動的でやや荒々しい筆致による印象主義的な展開など画家の表現的躍進が感じられる。



【固く閉じられた黒衣の女性が握る扇】

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