Description of a work (作品の解説)
2008/04/19掲載
Work figure (作品図)
■ 

目を閉じて(閉じられた目、瞑目)

 (Les yeux clos) 1890年
44×36cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

フランス象徴主義の大画家オディロン・ルドンの最も重要な作品のひとつ『目を閉じて(閉じられた目、瞑目)』。本作は長男ジャンの死から三年後の1889年に次男アリが誕生した翌年に制作された作品で、水面らしき地平の彼方で眼を閉じた巨大な女性が描かれている。本作が制作される以前のルドン作品は『眼=気球』や『笑う蜘蛛』の様に、一見不気味で奇怪な世界を、木炭やリトグラフを用い黒という単色のみで構成される色彩で描いたもの(作風)が大半であったが、本作には観る者の心に染み入るような温もりを感じさせる豊潤で幻想的な色彩が溢れている。これは長男ジャンが生後6ヶ月で死去し、大きな失望を味わったルドンが、その3年後に次男アリを授かったことで、(画家自身、里子に出され孤独な幼少期を過ごしたことも含めて)これまでに得ることができなかった幸福感に満たされたことが、画家の作風に決定的な影響(色彩)を与えたと考えられる。またルドンは≪目(眼)≫という画題に対して、特別な思いを抱いており、本作を手がけるまで『眼=気球』のように、その目は闇や精神的内面、孤独、不安、死などへと視線が向けられていたものの、本作では、それらから開放されかたのように目を閉じ、穏やかで安らぎに満ちた(目の)表情を見せている。さらに陽光を反射する水面を思わせる画面下部の(本作中で)最も輝度の高い部分は、次男アリの誕生によって画家の内面(心)に射し込んだ希望と喜びの光が反映しているとも解釈できるほか、上空の美しい青色の空の表現には画家の(孤独的な過去)からの決別を感じることができる。なおルドンの黒の時代からの離脱と、色彩の採用という重要な転換点となった本作は1904年に国家が買い上げ、現在はパリのオルセー美術館に所蔵されている。


【全体図】
拡大表示
穏やかで安らぎに満ちた閉じられた目の表情。本作を手がけるまで『眼=気球』のように、その目は闇や精神的内面、孤独、不安、死などへと視線が向けられていたものの、本作では、それらから開放されかたのように目を閉じ、穏やかで安らぎに満ちた(目の)表情を見せている。



【穏やかで安らぎに満ちた目の表情】
あたかも希望の光のような輝く色彩。陽光を反射する水面を思わせる画面下部の(本作中で)最も輝度の高い部分は、次男アリの誕生によって画家の内面(心)に射し込んだ希望と喜びの光が反映しているとも解釈することができる。



【あたかも希望の光のような輝く色彩】
上空の美しい青色の空の表現。この空の表現には画家の(孤独的な過去)からの決別を感じることができる本作は長男ジャンの死から三年後の1889年に次男アリが誕生した翌年に制作された作品で、水面らしき地平の彼方で眼を閉じた巨大な女性が描かれている。



【上空の美しい青色の空の表現】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ