Description of a work (作品の解説)
2009/12/01掲載
Work figure (作品図)
■ 

クォ・ヴァディス

 (Quo Vadis) 1904年
229×210cm | 油彩・画布 | ドイ・コレクション

スラヴ(チェコ)出身の画家アルフォンス・ミュシャ、アメリカ時代を代表する油彩画作品のひとつ『クォ・ヴァディス』。本作はミュシャが1904年から1910年までに数回滞在したアメリカで制作された最初期の作品で、画題はロシア占領下のポーランド出身で、1905年にはノーベル文学賞をも受賞している偉大な小説家ヘンリク・シェンキェヴィチの傑作歴史小説≪クォ・ヴァディス≫に典拠を得ている。本作の画題となった小説≪クォ・ヴァディス≫の舞台はキリスト教への迫害が厳しかったローマ帝国第5代皇帝ネロの統治下におけるローマであり、本作はその中で主人公である戦争から帰還したばかりのローマ軍大隊長ヴィニキウスが、彼の叔父でありギリシア思想の体現者ガイウス・ペトロニウスの下へ訪れるという小説の最初章の場面が描かれている。画面左側に描かれるペトロニウスはあたかも神話に登場する神々の彫刻を連想させるような逞しく理想化された肉体の背格好で描かれている。画面右側には帰還したばかりの主人公ヴィニキウスがカーテンを開き叔父ペトロニウスの部屋を訪れる姿が、そして中央にはヴィニキウスが恋心を抱いていた(ローマ軍によって征服された)リギイ族の娘でキリスト教徒であったカリナ(リギア)が叔父ペトロニウスへ魅惑的な視線を送る姿が配されている。さらに画面前景には煙の立つ香炉が配され、本作に緩やかで流水的な運動性と異界的な雰囲気を与えている。言葉として「何処に行き給わる(何処に行くのですか)」との意味を持つ≪クォ・ヴァディス≫を執筆するにあたり著者シェンキェヴィチは綿密な時代考証を重ねたことがよく知られており、本作にはミュシャが1890年代に制作した歴史書の挿絵での経験がよく活かされている。なおミュシャが最初のアメリカ滞在の時に仕上げられた本作は、完成後、長い間行方不明となっていたが、近年(1980年)シカゴで発見されたという逸話が残されている。


【全体図】
拡大表示
ギリシア思想の体現者ペトロニウスとリギイ族の娘リギア。本作はミュシャが1904年から1910年までに数回滞在したアメリカで制作された最初期の作品で、画題はロシア占領下のポーランド出身で、1905年にはノーベル文学賞をも受賞している偉大な小説家ヘンリク・シェンキェヴィチの傑作歴史小説≪クォ・ヴァディス≫に典拠を得ている。



【ペトロニウスとリギアの姿】
煙が立ち昇る香炉。本作は主人公である戦争から帰還したばかりのローマ軍大隊長ヴィニキウスが、彼の叔父でありギリシア思想の体現者ガイウス・ペトロニウスの下へ訪れるという小説の最初章の場面が描かれている。



【煙が立ち昇る香炉】
戦争から帰還した主人公ヴィニキウス。ミュシャが最初のアメリカ滞在の時に仕上げられた本作は、完成後、長い間行方不明となっていたが、近年(1980年)シカゴで発見されたという逸話が残されている。



【戦争から帰還したヴィニキウス】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ