Description of a work (作品の解説)
2009/09/29掲載
Work figure (作品図)
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受難

 (La Passion) 1904年
202×74cm | リトグラフ | 所蔵先複数

アール・ヌーヴォー様式の偉大なる画家アルフォンス・ミュシャを代表する宗教的主題作品のひとつ『受難』。20世紀初頭に制作された本作は、当時パリで上演されていた新作宗教劇≪受難≫のためのポスター作品である。本作の主題であり、宗教劇の演目である≪受難≫は、イスカリオテのユダの裏切りによって逮捕された主イエスが、自らユダヤの王を名乗り民衆を惑わせたとして、ユダヤの大司祭カイアファや民衆らから告発を受け、ゴルゴタの丘で磔刑に処されて死するまでの一連の出来事を指し、キリスト教の教義においても非常に重要視されるものである。ミュシャは幼少期に聖ペトロフ教会聖歌隊に入隊するなどキリスト教の敬虔な信者であることが良く知られており、本作にはポスターとしての広告的要素を十分に満たしながら、画家の深い信仰心も同時に見出すことができる。画面中央に配される受難者イエスは、笞打ちの刑の際に嘲笑と共に被せられたとされる≪茨の冠≫を右手に持ち、簡素かつ質素な修道的衣服に身を包みながら脱力的に立っている。しかし受難者イエスは信者(又は人類)へと向けられているかのような慈愛に満ちた穏やかな表情を浮かべており、≪受難≫という極めて過酷でドラマチックな場面を対比的に強調している。さらに受難者イエスの胸部にはハートを模した小さな装飾品が桃色によって描き込まれており、本作に描かれる対象の性格性を明確化している。本作には主題的要因からミュシャ独特の異国的雰囲気や、画家が描く女性の匂い立つような都会的甘美性などは認められないものの、画家の主イエスに対する深い感情と情念を強く感じることができ、キリスト教徒としてのミュシャの側面を考察する点でも重要な作品として位置付けられている。


【全体図】
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慈愛に満ちた受難者イエスの表情。本作の主題≪受難≫は、自らユダヤの王を名乗り民衆を惑わせたとして、ユダヤの大司祭カイアファや民衆らから告発を受け、ゴルゴタの丘で磔刑に処されて死するまでの受難者イエスの一連の出来事を指し、キリスト教の教義においても非常に重要視されるものである。



【慈愛に満ちた受難者イエス】
ハートを模した胸部の装飾。本作は、当時パリで上演されていた新作宗教劇≪受難≫のためのポスター作品で、ミュシャは幼少期に聖ペトロフ教会聖歌隊に入隊するなどキリスト教の敬虔な信者であることが良く知られており、本作にはポスターとしての広告的要素を十分に満たしながら、画家の深い信仰心も同時に見出すことができる。



【ハートを模した胸部の装飾】
受難の象徴である茨の冠。本作には主題的要因からミュシャ独特の異国的雰囲気や、匂い立つような都会的甘美性などは認められないものの、画家の主イエスに対する深い感情と情念を強く感じることができ、キリスト教徒としてのミュシャの側面を考察する点でも重要な作品として位置付けられている。



【受難の象徴である茨の冠】

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