Description of a work (作品の解説)
2010/06/15掲載
Work figure (作品図)
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夕べの声

 (Voix du soir) 1890年頃
34.5×32cm | 水彩・紙 | ギュスターヴ・モロー美術館

19世紀末フランス象徴主義の巨匠ギュスターヴ・モロー晩年期を代表する作品のひとつ『夕べの声』。1890年からモローが死する前年となる1897年頃のいずれかの時期に制作されたと考えられ、画家最晩年期の作品のひとつに位置付けられる本作は、奏楽の3天使の頭上に輝く宵の明星(金星)にて≪夕刻≫そのものを主題に描かれた作品である。画面中央に描かれる有翼の3天使は鮮やかな赤い豪奢な衣服を身に着けた中央の天使を中心にほぼ対称的(シンメトリー)に描かれており、その浮遊的でありながらも安定的で厳格性豊かな構成にはモロー作品に共通する独特の神聖な精神的神秘性を強く感じさせる。また3天使個々の頭上に輝く白色の星と、それよりさらに強い明々とした輝きを放つ宵の明星には1890年にこの世を去った最愛の恋人アデライド=アレクサンドリーヌ・デュルーの死や、やがて己にも訪れる(決して逃れられない)死の象徴性を見出すことができる。このような本作に込められる画家の精神的内面も特に注目すべき点であるが、何より本作で特筆すべき点は多様で華麗な水彩による色彩の秀逸な出来栄えにある。中央の天使には赤色の、左右の天使にはその補色的関係にある緑色の衣服を身に着けさせ色彩的対比を示しつつ、3天使の背に生える青々とした翼が見事なアクセントとなって画面を引き締めている。さらに背景に用いられる中間色や黒色に近い色彩は奏楽の3天使、そして主題である宵の明星と明度的コントラストを示しており、観る者に鮮烈な印象を与えることに成功している。


【全体図】
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画面の中で最も輝く宵の明星。1890年からモローが死する前年となる1897年頃のいずれかの時期に制作されたと考えられ、画家最晩年期の作品のひとつに位置付けられる本作は、奏楽の3天使の頭上に輝く宵の明星(金星)にて≪夕刻≫そのものを主題に描かれた作品である。



【画面中で最も輝く宵の明星】
対称性が際立つ奏楽の3天使の造形。画面中央に描かれる有翼の3天使は鮮やかな赤い豪奢な衣服を身に着けた中央の天使を中心にほぼ対称的(シンメトリー)に描かれており、その浮遊的でありながらも安定的で厳格性豊かな構成にはモロー作品に共通する独特の神聖な精神的神秘性を強く感じさせる。



【対称性が際立つ3天使の造形】
豪奢で華麗な3天使の身に着ける衣服。中央の天使には赤色の、左右の天使にはその補色的関係にある緑色の衣服を身に着けさせ色彩的対比を示しつつ、3天使の背に生える青々とした翼が見事なアクセントとなって画面を引き締めている。



【豪奢で華麗な3天使の衣服】

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