Description of a work (作品の解説)
2008/05/07掲載
Work figure (作品図)
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パラス・アテネ(パラス・アテナ)

 (Pallas Athene) 1898年
60×44cm | 油彩・画布・金箔 | ウィーン市立歴史美術館

19世紀末に誕生した象徴主義の画家グスタフ・クリムトが手がけた代表作『パラス・アテネ』。第二回分離派展への出品作である本作に描かれるのは、知恵と諸芸術、そして戦いを司る女神であり、ギリシャ神話において最高の女神とされる≪パラス・アテネ(ローマ神話のミネルヴァと同一視される)≫である。女神アテネ(アテナ)は、王座を奪われることを恐れた主神ユピテルが、アテネを身篭った最初の妻を呑み込んで亡き者としたものの、火神ウルカヌスによって主神ユピテルが斧で頭を叩き割られ、その傷口から武装した姿で雄叫びをあげながら生まれ出でたとされ、本作に描かれるアテネの姿は、その神話的逸話をまざまざと感じさせるほど恐々しく威厳に満ちており、女神としての聖性を感じさせると共に、狂気的で悪魔的な性格も顔を覗かせている。また女神アテネが倒した巨人族バラスが名称の由来となった≪パラス≫は、処女や武器を持つ人を意味するとされている。女神アテネの真正面を向き厳しい眼差しを向ける表情の表現にはクリムトも高く評価していたベルギー象徴派の画家フェルナン・クノップフの影響が指摘されているほか、クリムトらが伝統主義者(キュンストラーハウス)らと断絶し、結成したゼツェッション(ウィーン分離派)の象徴的作品となった本作のパラス・アテネが身に着ける黄金の甲冑の胸部に描かれる、舌を出した(見た者を石にするという逸話でも知られる)ゴルゴンは、ゼツェッションへの理解を示さない保守的な伝統主義者たちへの侮蔑・挑戦と解釈されている。画面背後にはギリシャの壷絵から借用した文様が描かれており、女神アテネが黄金の槍を持つ左腕部分に描かれる梟(フクロウ)はアテネの象徴であるほか、その上に配された格闘するヘラクレスの姿は伝統と対峙し争う分離派を意味するとされている。また女神が右手に持つ勝利の女神ニケ像の姿は、翌年に画家が手がけた傑作『ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』の裸婦像を予感させる。その他にも妖艶な官能性や金色を多用した豊かな装飾性、平面的表現と写実的表現が混在した分離派好みであるクリムト独自の画面展開・構成など注目すべき点は多い。


【全体図】
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恐々しく威厳に満ちた女神アテネの表情。第二回分離派展への出品作である本作に描かれるのは、知恵と諸芸術、そして戦いを司る女神であり、ギリシャ神話において最高の女神とされる≪パラス・アテネ≫である。



【恐々しく威厳に満ちた女神アテネ】
輝きに溢れた装飾性豊かな金色の甲冑。本作のパラス・アテネが身に着ける黄金の甲冑の胸部に描かれる、舌を出した(見た者を石にするという逸話でも知られる)ゴルゴンは、ゼツェッションへの理解を示さない保守的な伝統主義者たちへの侮蔑・挑戦と解釈されている。



【装飾性豊かな輝く金色の甲冑】
女神アテネの象徴である梟(フクロウ)。女神アテネが黄金の槍を持つ左腕部分に描かれる梟(フクロウ)はアテネの象徴であるほか、その上に配された格闘するヘラクレスの姿は伝統と対峙し争う分離派を意味するとされている。



【女神アテネの象徴である梟(フクロウ)】
女神アテネが右手に持つ勝利の女神ニケの像。ゼツェッション(ウィーン分離派)の象徴的作品となった本作のニケ像の姿は、翌年に画家が手がけた傑作『ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』の裸婦像を予感させる



【アテネが持つ勝利の女神ニケの像】

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