Description of a work (作品の解説)
2008/05/09掲載
Work figure (作品図)
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アダムとエヴァ(アダムとイブ)

 (Adam und Eva) 1918年
166×190cm | 油彩・画布 | オーストリア美術館(ウィーン)

ウィーン分離派の最大の巨人グスタフ・クリムト最晩年の代表作のひとつ『アダムとエヴァ(アダムとイブ)』。1917年に最初の筆が入れられた本作に描かれるのは、旧約聖書中に記される、天地創造の六日目に、神が自らの姿に似せ、地上の塵から創造したとされる最初の人間(男性)≪アダム≫と、≪アダム≫の肋骨から創造された最初の女性≪エヴァ≫の姿である。首を傾げ、まるで観る者へ媚びるかのような視線を向け、薄く口角を上げた艶かしく勝ち誇った表情を浮かべた最初の女性エヴァが、柔和ながら明確な光を浴び、脱力しながらゆったりと立っている。その姿態は全体で緩いS字を描いており、豊満な身体の表現と共に、女性的な身体の曲線美を強調している。一方、エヴァに寄り添うアダムの姿は、エヴァの姿で頭部と両肩・腕部分しか見えないものの、その表情は疲弊感と諦念感が漂っており、暗く沈んだ肌の色彩は、重々しい背景と同化しているかのようである。エヴァの足下には(男を誘惑する)己の美しさを飾り立てる花々が、アダムの足下には、聖書では悔悛しない悪や不信の象徴とされる斑点状の豹の毛皮が描かれている(※ただしエジプト美術やギリシャ神話では光の生命・聖獣とされており、クリムトの傾倒も考慮し解釈は分かれている)。エヴァの両手部分やアダムの右手部分などが示すよう、最晩年の代表作『花嫁』と同じく、未完の作品である本作の退廃的な雰囲気や妖艶な表現、太く明確な輪郭線によって描写されるエヴァの人体表現、あたかも死した肉体を思わせる蒼白色と黄色味を帯びた斑点が混在する肌の質感は、クリムト晩年の様式的特長を良く示している。

関連:1917-18年 『花嫁』


【全体図】
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艶かしいエヴァの表情と疲弊感と諦念感が漂うアダムの表情。本作に描かれるのは、旧約聖書中に記される、天地創造の六日目に、神が自らの姿に似せ、地上の塵から創造したとされる最初の人間(男性)≪アダム≫と、≪アダム≫の肋骨から創造された最初の女性≪エヴァ≫の姿である。



【艶かしいエヴァと疲弊感が漂うアダム】
死した肉体を思わせる蒼白色と黄色味を帯びた斑点が混在する肌の質感。柔和ながら明確な光を浴び、脱力しながらゆったりと立っているエヴァの姿態は全体で緩いS字を描いており、豊満な身体の表現と共に、女性的な身体の曲線美を強調している。



【蒼白色と黄色の斑点が混在する肌】
エヴァの美しい身体を飾り立てる花々。エヴァの足下には(男を誘惑する)己の美しさを飾り立てる花々が、アダムの足下には、聖書では悔悛しない悪や不信の象徴とされる斑点状の豹の毛皮が描かれている。



【エヴァの美しい身体を飾り立てる花々】
描かれずに終わった本作の未完部分。未完の作品である本作の退廃的な雰囲気や妖艶な表現、太く明確な輪郭線によって描写されるエヴァの人体表現などは、クリムト晩年の様式的特長を良く示している。



【描かれずに終わった本作の未完部分】

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