Description of a work (作品の解説)
2008/12/01掲載
Work figure (作品図)
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化粧(鏡の前の裸婦)

 (La toilette (Nu au miroir)) 1931年
153.5×104cm | 油彩・画布 | ヴェネツィア近代美術館

親密派の偉大なる画家ピエール・ボナール1930年代を代表する裸婦作品のひとつ『化粧(鏡の前の裸婦)』。ボナールが晩年期となる64歳の時に制作された本作は、画家最愛の妻マルトをモデルに室内に置かれた大きな鏡の前で立つ裸婦を描いた作品である。1914年にもボナールは同主題の作品『化粧』を制作しているが、本作と比較すると明らかに様式的な変化を見出すことができ、画家の晩年の大きな特徴である、所謂≪時代遅れ≫と呼ばれる様式の典型的な作品としてもよく知られている。画面中央へ、現実には老いていたものの、作品中では瑞々しく官能的な若い女性の姿で裸体を露にしながら鏡の前にヒールを履きながら立つ妻マルトの後ろ姿(全身像)が配され、その左側には(観る者の角度からはマルトの姿が見えない)大きな鏡が置かれており、室内の様子を映している。さらに画面右側には白い足長のテーブルとそこに置かれる小さな鏡や果物らしきもの、緑色の背凭れが付いた木製の椅子、カーテンの掛かる窓などが描かれている。室内へと射し込む柔らかい陽光を背に浴びるマルトの背中はまるで彼女の美しさを称えるかのように白く輝いており、裸婦としての日常的な官能性を強調している。また色彩表現においても描かれる各対象があたかも渾然一体と溶け合うかのように多様な色彩が混ざり、非現実的で夢想的な雰囲気を醸し出しているものの、そこには統一的な調和を感じることができる。このような一種の抽象的表現は同時代では既に時代遅れとなっていたが、本作にはボナールが幾多の絵画制作を経て、晩年だからこそ辿り着いた美と芸術の粋が示されており、だからこそ今も観る者に感動を与え続けているのである。

関連:1914年制作 『化粧』


【全体図】
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若々しい妻マルトの官能的な姿。画面中央へは、現実には老いていたものの、作品中では瑞々しく官能的な若い女性の姿で裸体を露にしながら鏡の前にヒールを履きながら立つ妻マルトの後ろ姿(全身像)が配されている。



【若々しい妻マルトの官能的な姿】
柔らかい陽光に照らされ白く輝く妻マルトの背中。室内へと射し込む柔らかい陽光を背に浴びるマルトの背中はまるで彼女の美しさを称えるかのように白く輝いており、裸婦としての日常的な官能性を強調している。



【白く輝く妻マルトの背中】
鏡に映り込んだ室内の様子。1914年にもボナールは同主題の作品『化粧』を制作しているが、本作と比較すると明らかに様式的な変化を見出すことができ、画家の晩年の大きな特徴である、所謂≪時代遅れ≫と呼ばれる様式の典型的な作品としてもよく知られている。



【鏡に映り込んだ室内の様子】

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