Description of a work (作品の解説)
2009/02/04掲載
Work figure (作品図)
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自画像

 (Portrait du peintre par lui-même) 1945年
56×46cm | 油彩・画布 | 個人所蔵(ニューヨーク)

ナビ派、そして親密派を代表する画家ピエール・ボナール最晩年の重要な作品『自画像』。画家が死去する2年前となる1945年に制作された本作は、ボナール78歳の姿を描いた≪自画像≫作品で、画家は本作以外にも『化粧室の鏡の中の自画像』など同年に2点の自画像を手がけている。画面のほぼ中央に描かれる老いたボナール自身の姿は虚空を見つめるかのように眼窩には深い陰影沈み込み、そこからは否が応にも迫り来る≪死≫に対する諦めや無関心的な境地を観る者に抱かせる。さらに画面全体を支配するどこか陰鬱で重々しい印象は、本作に描かれるボナールの虚無的な表情はもちろん、褐色的に描写される色彩の効果も大きい。本作を考察するにあたり、しばしば指摘されているのは、1936年頃から制作され続け、未完のまま絶筆となった『サーカスの馬』との関連性、類似性である。『サーカスの馬』に描かれる白馬も、本作中のボナール自身の姿と同様、どこか非現実染みた眼窩のみで眼部が表現されており、その印象はまるで得体の知れない怪物のようでもある。さらに『サーカスの馬』で用いられる奇抜的でどこか狂気や幻想性に満ちたコントラストの激しい色彩表現は画家の内なる不安や、ある意味における現実からの逃避を容易に連想させる。そのような観点から本作を今一度考察すると、本作にはボナールの真摯で実直な心情そのものを描くという画家の意図を読み取ることができ、その点においても本作は最晩年の画家の作品の中でも非常に重要な作品と言える。

関連:1936-45年頃制作 『サーカスの馬』
関連:1945年制作 『化粧室の鏡の中の自画像』


【全体図】
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暗く沈み込んだボナールの眼窩。画面のほぼ中央に描かれる老いたボナール自身の姿は虚空を見つめるかのように眼窩には深い陰影沈み込み、そこからは否が応にも迫り来る≪死≫に対する諦めや無関心的な境地を観る者に抱かせる。



【暗く沈み込んだボナールの眼窩】
褐色的な色彩が用いられる表現手法。画家が死去する2年前となる1945年に制作された本作は、ボナール78歳の姿を描いた≪自画像≫作品で、画家は本作以外にも『化粧室の鏡の中の自画像』など同年に2点の自画像を手がけている。



【褐色的な色彩が用いられる表現手法】
画面全体を支配するどこか陰鬱で重々しい印象。。『サーカスの馬』と比較しながら本作を考察すると、本作にはボナールの真摯で実直な心情そのものを描くという画家の意図を読み取ることができ、その点においても本作は最晩年の画家の作品の中でも非常に重要な作品と言える。



【どこか陰鬱で重々しい印象の背景】

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