Description of a work (作品の解説)
2009/10/08掲載
Work figure (作品図)
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難破船

 (The Shipwreck) 1805年
78×122cm | 油彩・画布 | テート・ギャラリー(ロンドン)

18世紀後半から19世紀前半にかけて活躍した英国ロマン主義の巨匠ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー初期の代表作『難破船』。本作はオランダの画家ファン・デ・フェルデの海洋図版画に比類する海景図を求めたブリッジウォーター公爵の依頼により制作された連作的海景図作品群の中の1点である。画家は「この版画が私を画家にしてくれた」と発言するほど、一連の海景図作品の源流ともなったファン・デ・フェルデの版画から多大な影響を受けており、うねるような海流の躍動的表現などにそれが鮮明に表れている。しかし本作で最も注目すべき点は名称ともなっている≪難破船≫を後景へと押しやるほどターナーが注力した、自然の驚異に対して為す術が無い人間の姿の描写にある。本作の画面前景に描かれるのは、荒れ狂う海で難破した大型船から脱出した生存者たちと生存者らが乗る小船(ボート)であり、船ごと飲み込まんとする高波にさらわれまいと必死にボートにしがみつく生存者らの姿は、ドラマチックな印象を観る者に与えるのみならず、自然の驚異をより強調する効果も発揮しており、我々は今も強い感銘を受けることができる。この恐怖的で人々の不安を煽る独特の主情的表現はターナーのロマン主義的傾向の最も大きな特徴のひとつであり、特に本海景図ではそれが顕著に示されている。


【全体図】
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ボートにしがみつく人々の必死な姿。本作はオランダの画家ファン・デ・フェルデの海洋図版画に比類する海景図を求めたブリッジウォーター公爵の依頼により制作された連作的海景図作品群の中の1点である。



【ボートにしがみつく人々の必死な姿】
荒れ狂う海上と白波。船ごと飲み込まんとする高波にさらわれまいと必死にボートにしがみつく生存者らの姿は、ドラマチックな印象を観る者に与えるのみならず、自然の驚異をより強調する効果も発揮しており、我々は今も強い感銘を受けることができる。



【荒れ狂う海上と白波】
観る者の不安を煽る重苦しい雲。画家は「この版画が私を画家にしてくれた」と発言するほど、一連の海景図作品の源流ともなったファン・デ・フェルデの版画から多大な影響を受けており、うねるような海流の躍動的表現などにそれが鮮明に表れている。



【観る者の不安を煽る重苦しい雲】

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