Description of a work (作品の解説)
2009/11/09掲載
Work figure (作品図)
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ボルドーのミルク売りの少女


(La lechera de Burdeos) 1825-1827年頃
74×68cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

激動の時代を生きたスペイン絵画界の大画家フランシスコ・デ・ゴヤが最晩年に制作した傑作『ボルドーのミルク売りの少女(ボルドーのミルク売り娘)』。1825年から死の前年となる1827年の間に制作された、ほぼ確定的にゴヤの絶筆として考えられている本作の主題については画家の娘ロサリオの肖像とするなど一部の研究者らから異説も唱えられているものの、一般的にはゴヤが最晩年の4年間を過ごしたフランス南西部の都市ボルドーで≪ミルク売りをする娘≫を描いた作品であるとされている。画面中央に配されるミルク売りの少女は穏やかな朝の陽光に包まれ輝きを帯びながら、ロバの背に乗り牛乳を売りに近隣へと向かっている。画面左下に牛乳の容器が確認できるものの、それ以外の要素は全く描かれておらず殆どミルク売りの少女のみで構成される本作は、最晩年の画家の作品とは考えられないほど意欲的な技巧的挑戦性に溢れている。画面左上から右上にかけて黄色から青緑色へと変化する繊細な朝の陽光の描写を始め、横顔から捉えられるミルク売りの少女の生命感に溢れる様子、身に着けるやや肌が透けた肩掛けの複雑に構成される色彩、画面下部のスカートに用いられる濃紺と陽光との対比、そして自由闊達な筆触や、おぼろげな形状描写などに示される表現的特長は、宮廷画家時代のゴヤの表現様式とは明確な差異を確認することができる。さらに本作に示される表現的特長は19世紀後半に一大旋風を巻き起こす印象派の技法に通じるものであり、故に本作は印象主義の先駆とも見做されている。また本作は若き頃の己の野心と絶頂期での大病、宮廷の堕落、フランス軍によるスペイン侵攻など激動の時代と人生を過ごし、そこで人間の表裏を克明に描いてきたゴヤが、その生涯の中で辿り着いた≪光≫や≪最後の救い≫として、さらには老いた自身に対する≪若さ≫への渇望としての解釈もおこなうことができる。本作はゴヤの死後、画家が最晩年を共に過ごしたレオカディア・ソリーリャが相続し、ゴヤの庇護者であったムギーロ伯爵へと売却された(※ゴヤは遺言の中で「金1オンス以下では売らぬよう」と本作売却に関する指示を残している)。


【全体図】
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生命力に溢れた血色の良い娘の姿。本作は画家の娘ロサリオの肖像とするなど一部の研究者らから異説も唱えられているものの、一般的にはゴヤが最晩年の4年間を過ごしたフランス南西部の都市ボルドーで≪ミルク売りをする娘≫を描いた作品であるとされている。



【生命力に溢れた血色の良い娘の姿】
複雑に透き通る肩掛けの色彩。黄色から青緑色へと変化する繊細な朝の陽光の描写、ミルク売りの少女の生命感に溢れる様子、身に着けるやや肌が透けた肩掛けの複雑に構成される色彩、画面下部のスカートに用いられる濃紺と陽光との対比、そして自由闊達な筆触や、おぼろげな形状描写などに示される表現的特長は本作の注目べき点である。



【複雑に透き通る肩掛けの色彩】
輝きを帯びる朝の陽光。本作は若き頃の己の野心と絶頂期での大病、宮廷の堕落、フランス軍によるスペイン侵攻など激動の時代と人生を過ごし、そこで人間の表裏を克明に描いてきたゴヤが、その生涯の中で辿り着いた≪光≫や≪最後の救い≫として、さらには老いた自身に対する≪若さ≫への渇望としての解釈もおこなうことができる。



【輝きを帯びる朝の陽光】

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