Description of a work (作品の解説)
2009/10/04掲載
Work figure (作品図)
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黒衣のアルバ女公爵

 (Duquesa de Alba) 1797年
210×149.5cm | 油彩・画布 | アメリカ・ヒスパニック協会

18世紀スペインの最も偉大な画家フランシスコ・デ・ゴヤの極めて私的な作品『黒衣のアルバ女公爵』。本作は(おそらくはほぼ確実に)ゴヤと愛人関係にあったアルバ女公爵≪マリア・デル・ピラール・カイェターナ≫の全身肖像画である。1762年にスペイン随一の貴族アルバ公爵家に生まれ、14歳の時に第13代アルバ公爵位を継承したマリア・デル・ピラール・カイェターナは、美貌、性格、財産、家柄など全ての面において当時のスペイン社交界で傑出した存在であり、最も魅惑に溢れた人物として人々の注目を集めていた女性で、本作を手がける以前にもゴヤは『白衣のアルバ女公爵』などアルバ女公爵の肖像画を制作しているものの、夫を亡くしたアルバ女公爵が1796年の夏にサンルカールの別荘に滞在していた時に画家も同別荘へ訪れるなど、この頃、両者の関係は極めて親密であったと考えられている。画面中央へ配される黒い喪服を身に着けたアルバ女公爵はやや斜めに立ち、本作を観る者へと真っ直ぐ視線を向けている。速筆的でありながらも丹念に描き込まれる衣服の細やかな描写や絶妙な対比をみせる色彩、アルバ女公爵の存在感を際立たせる簡素かつ明瞭な背景や光彩表現なども特筆に値する出来栄えであるが、本作において最も注目すべき点は、やはり意味深げなアルバ女公爵の姿態にある。アルバ女公爵の右手の中指にはめられる黄金の指輪には≪Alba(アルバ)≫と刻まれており、さらに人差し指は示す地面には≪Solo Goya(ゴヤだけ)≫と記されている。この大地に記された≪Solo Goya≫の文字は近年おこなわれた洗浄によって浮かび上がってきたものであり、絵の具で重ね塗りされ隠蔽されていた意味からも両者の関係が秘匿的であったことを如実に物語っている。しかしながら本作が完成した時点で、両者の関係に何らかの不和が生じたのであろう本作はアルバ女公爵に渡されず、画家は手元に残している(※出版はされなかったものの、ゴヤが手がけた版画の中に両者の関係の終焉や離別を思わせる作品が残されている)。なおアルバ女公爵は1802年、40歳という若さで死去しており、その死については今も謎が残されている。

関連:1795年頃制作 『白衣のアルバ女公爵』


【全体図】
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観る者へと視線を向ける無表情なアルバ女公爵。1762年にスペイン随一の貴族アルバ公爵家に生まれ、14歳の時に第13代アルバ公爵位を継承したマリア・デル・ピラール・カイェターナは、美貌、性格、財産、家柄など全ての面において当時のスペイン社交界で傑出した存在であり、最も魅惑に溢れた人物として人々の注目を集めていた女性であった。



【視線を向けるアルバ女公爵】
丹念かつ繊細に描き込まれた衣服の表現。ゴヤと極めて親密な関係にあったアルバ女公爵の右手の中指にはめられる黄金の指輪には≪Alba(アルバ)≫と刻まれており、さらに人差し指は示す地面には≪Solo Goya(ゴヤだけ)≫と記されている。



【丹念かつ繊細に描き込まれた衣服】
大地に記される≪Solo Goya(ゴヤだけ)≫の文字。この大地に記された≪Solo Goya≫の文字は近年おこなわれた洗浄によって浮かび上がってきたものであり、絵の具で重ね塗りされ隠蔽されていた意味からも両者の関係が秘匿的であったことを如実に物語っている。



【大地に記される≪Solo Goya≫の文字】

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