Description of a work (作品の解説)
2009/11/11掲載
Work figure (作品図)
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羨望偏執狂(ねたみ偏執狂)

 1822-23年頃
(La monomane de l'envie, dit aussi L'Hyène de la Salpêtrière)
72×58cm | 油彩・画布 | リヨン美術館

フランスロマン主義の先駆者テオドール・ジェリコーの類稀な肖像画作品『羨望偏執狂(ねたみ偏執狂)』。本作は10点から構成される連作≪サルペトリエールの精神疾患者たち≫のひとつである(※現存する作品は本作のほか、『賭博偏執狂』『幼児誘拐偏執狂』『軍令偏執狂』『窃盗偏執狂』の5点のみである)。本連作は、一般的にはジェリコーが代表作『メデュース号の筏』を手がけた後、重度の鬱病を患った時に訪れたパリのサルペトリエール病院で医師をしていた精神科医エティエンヌ=ジャン・ジョルジェのために制作されたと考えられているが、本作の制作動機については古くから同医師の論文の挿絵説が唱えられるなど依然として研究の余地も残されている。本作では画面中央へ質素な身なり老婆の姿が配されているが、充血しつつも鋭い眼光や笑みを浮かべるような唇、やや乱れた髪の毛などその表情は本作の名称『羨望偏執狂(ねたみ偏執狂』の名を容易に連想させる雰囲気を携えている。本作を始めこの連作に描かれる人物のモデルについては現在も不明であるが、そこに示された対象への客観的観察と近代精神医学論に基づいた、誇張も先入観も感じられない絵画的虚飾を除外する精神的狂気と正常的意思の極めて絶妙な描写は、同時代では突出した特異的肖像表現であり、今なお本連作と対峙する我々の内面へと迫ってくる。なお本連作を所有していたジョルジェ医師の死後、ラシェーズ、マレシャルのふたりの医師が5点つづ買い取ったものの、ラシェーズは他の者を介して作品を売却し、その後各美術館へ散逸、マレシャルは英国へ渡った後の行動が知れず現在も作品の行方は不明のままである。

関連:連作『賭博偏執狂』
関連:連作『幼児誘拐偏執狂(人さらい偏執狂)』


【全体図】
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乱れた老婆の髪の毛。本作は、一般的にはジェリコーが代表作『メデュース号の筏』を手がけた後、重度の鬱病を患った時に訪れたパリのサルペトリエール病院で医師をしていた精神科医エティエンヌ=ジャン・ジョルジェのために制作された連作の中の1点と考えられているが、本作の制作動機については古くから同医師の論文の挿絵説が唱えられるなど依然として研究の余地も残されている。



【乱れた老婆の髪の毛】
狂気的に血走りながら生命力を感じさせる眼光。本作を始めこの連作に描かれる人物のモデルについては現在も不明であるが、そこに示された対象への客観的観察と近代精神医学論に基づいた、誇張も先入観も感じられない絵画的虚飾を除外する精神的狂気と正常的意思の極めて絶妙な描写は、同時代では突出した特異的肖像表現であり、今なお本連作と対峙する我々の内面へと迫ってくる。



【充血しつつも鋭い眼光】
笑みを浮かべたかのような唇。本連作を所有していたジョルジェ医師の死後、ラシェーズ、マレシャルのふたりの医師が5点つづ買い取ったものの、ラシェーズは他の者を介して作品を売却し、その後各美術館へ散逸、マレシャルは英国へ渡った後の行動が知れず現在も作品の行方は不明のままである。



【笑みを浮かべたかのような唇】

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