Description of a work (作品の解説)
2011/02/14掲載
Work figure (作品図)
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聖女たちに救われる聖セバスティアヌス


(Saint Sébastien secouru par les saintes femmes) 1836年
215×246cm | 油彩・画布 | ナンテュア教区聖堂

19世紀フランスロマン主義の巨匠ウジェーヌ・ドラクロワによる宗教画の代表的作例のひとつ『聖女たちに救われる聖セバスティアヌス』。同年のサロン出品作であり、国家の買い上げの後にフランス東部ジュラ地方ナンテュア教区聖堂に入った本作は、南フランスナルボンヌ出身のディオクレティアヌス帝付近衛兵(ローマ軍人)であったものの、殉教者らに声をかけられたことからキリスト教徒であることが発覚し、刑吏たちに杭に縛られた後、無数の矢を射られ、瀕死の状態に陥ったとされる聖セバスティアヌスを、看護婦の守護聖人としても知られる聖イレネが看病しその傷を癒したとされる≪聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス≫の場面を描いた作品である。前景として画面左側へ描かれる聖セバスティアヌスは背後に描き込まれる大樹に縛り付けられた後、肩や脇腹、脚などを矢で射られたために重傷を負い、刑に処された裸体のまま大樹に凭れ掛かり手足をだらりと広げ、その姿からは死に瀕している状態であることが明確に伝わってくる。そして画面中央に配される聖イレネが聖セバスティアヌスの様態を注視しながら、ゆっくりと確実に身体に刺さる矢を抜き彼の命を助けようと必死に介抱している。さらに画面右側には聖イレネの従者が処刑を終え帰路に着く刑吏たちを振り返りながら観察している姿が描き込まれている。本作の聖セバスティアヌスに示される肉体的苦痛と逞しく整った肉体美の対比、さらにはそれらと聖イレネの介抱という精神的な結びつきを叙情的に描写した表現は白眉の出来栄えである。また男性的な聖セバスティアヌスの肉体と肩が露わになる従者の丸みを帯びた女性的な肉体を形のみならず同系の色彩によっても表現する対比的手法も特に注目すべき点である。


【全体図】
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瀕死の状態の聖セバスティアヌス。同年のサロン出品作であり、国家の買い上げの後にフランス東部ジュラ地方ナンテュア教区聖堂に入った本作は、≪聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス≫の場面を描いた作品である。



【瀕死の聖セバスティアヌス】
必死に介抱する聖イレネ。画面中央に配される聖イレネが聖セバスティアヌスの様態を注視しながら、ゆっくりと確実に身体に刺さる矢を抜き彼の命を助けようと必死に介抱している。さらに画面右側には聖イレネの従者が処刑を終え帰路に着く刑吏たちを振り返りながら観察している姿が描き込まれている。



【必死に介抱する聖イレネ】
帰路に着く刑吏たち。本作の聖セバスティアヌスに示される肉体的苦痛と逞しく整った肉体美の対比、さらにはそれらと聖イレネの介抱という精神的な結びつきを叙情的に描写した表現は白眉の出来栄えである。



【帰路に着く刑吏たち】

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