Description of a work (作品の解説)
2010/05/07掲載
Work figure (作品図)
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オフィーリアの死

 (La mort d'Ophélie) 1845-53年頃
23×30.5cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

19世紀ロマン主義の巨匠ウジェーヌ・ドラクロワ屈指の代表作『オフィーリアの死』。数度のヴァリアントを経て完成に至った本作は、世界で最も著名な劇作家のひとりで、当時フランス国内のロマン主義者らに熱狂的に支持された(英国出身の)ウィリアム・シェイクスピアが手がけた四大悲劇のひとつ≪ハムレット≫第4幕7章を主題に、デンマーク王子ハムレットが父を毒殺して母と結婚した叔父に復讐を誓うものの、その思索的な性格のためになかなか決行できず、その間に恋人オフィーリアを狂乱に追いやった末、小川で溺死させてしまう悲劇的場面を描いた作品である。本作で画面中央に描かれるオフィーリアは小川の流れに揺蕩いながら、今まさに溺れて散らんとするその命を右手で小枝を掴みながら必死に繋ぎ止めている姿で描かれている。物語上、オフィーリアは抵抗空しく絶命してしまうものの、ここに描かれる彼女の悲劇的でありながら叙情性が際立つ姿は観る者を強く惹きつける。さらに本作で注目すべき点は、小作ながら際立つ画面構成の力動感と色彩表現の秀逸さにある。オフィーリアは小枝を掴む右手・右腕以外は非常に脱力的であり瀕死の状態が如実に表されているが、だからこそ命を繋ぎ止める右腕との対比が際立っている。ここにドラクロワの見出したシェイクスピア文学へのロマンチシズム的精神性の絵画的展開を見出すことができる。そして水面の直下で僅かに透き通りながら揺れるオフィーリアの身に着ける衣服の多様な色彩による表現や、オフィーリアへと当てられる光彩設計の効果は眼を見張る出来栄えを示している。なお画家は本作を手がける前に同主題の石版画と油彩画(1838年。ノイエ・ピナコテーク所蔵)を制作している。


【全体図】
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今まさに溺れて散らんとするオフィーリアの命。本作はシェイクスピアが手がけた四大悲劇のひとつ≪ハムレット≫第4幕7章を主題に、ハムレットが恋人オフィーリアを狂乱に追いやった末、小川で溺死させてしまう悲劇的場面を描いた作品である。



【溺れて散らんとするオフィーリアの命】
瀕死ながら命を繋ぎ止める右腕。オフィーリアは小枝を掴む右手・右腕以外は非常に脱力的であり瀕死の状態が如実に表されているが、だからこそ命を繋ぎ止める右腕との対比が際立っている。ここにドラクロワの見出したシェイクスピア文学へのロマンチシズム的精神性の絵画的展開を見出すことができる。



【瀕死ながら命を繋ぎ止める右腕】
水面に揺らめく衣服の多様な色彩。水面の直下で僅かに透き通りながら揺れるオフィーリアの身に着ける衣服の多様な色彩による表現や、オフィーリアへと当てられる光彩設計の効果は眼を見張る出来栄えを示している。



【水面に揺らめく衣服の多様な色彩】

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