Description of a work (作品の解説)
2010/09/14掲載
Work figure (作品図)
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ドン・ジュアンの難破(ドン・ジュアンの難船)


(Le Naufrage de Don juan) 1840年
135×196cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

フランスロマン主義の大画家ウジェーヌ・ドラクロワ1840年代の代表作品のひとつ『ドン・ジュアンの難破(ドン・ジュアンの難船)』。ドラクロワ自身も強く傾倒を示していた19世紀ロマン主義を代表する英国出身の詩人ジョージ・ゴードン・バイロンが長編詩としても残している、17世紀セビーリャ(スペイン)の若き放蕩好色男≪ドン・ジュアン(※仏語表記。スペイン語ではドン・ファン、イタリア語ではドン・ジョヴァンニと呼ばれる)≫を主題として制作された作品である。本作に描かれる場面は、放蕩三昧で土地を追い出されたドン・ジュアンが外国へと向かうために船に乗るが、その船が難破してしまい、さらに漂流の末に食料も底を尽いた為、食物として搭乗者の犠牲となる者を選定するくじ引きをおこなっている場面である。画面中央へ配される何とも頼りない小船の上には、ドン・ジュアンを始め、数多くの人が乗り込んでおり、搭乗員は必ずいずれかの者が食料として犠牲となるくじ引きをおこなっているものの、その様子は動的な迫力というよりも高ぶる緊張感と高揚感に溢れている。また船の中央でくじ引きをおこなう複数名の者の食い入るようなくじへの集中とは対照的に船の両端では、(くじ引きの結果もあるのであろう)気力と体力を無くし疲れきった搭乗員たちが脱力的に倒れ込んでいる。ドラクロワは初期作『ダンテの小船』を始め、その生涯の中で小船の乗る人々をモティーフとした作品を複数手がけているが、本作の荒涼とした海上の雰囲気や様々な感情が渦巻く搭乗員らの微妙な感情表現には特に注目すべき点が多い。なお本作の主題≪ドン・ジュアン≫は様々な芸術家の作品に取り上げられたことでも知られており、18世紀中〜後期に活躍した古典派の作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトや19世紀末に活躍した作曲家リヒャルト・シュトラウスなども同主題のオペラや交響詩を残している。


【全体図】
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くじ引きをおこなう搭乗員たち。ドラクロワ自身も強く傾倒を示していた19世紀ロマン主義を代表する英国出身の詩人ジョージ・ゴードン・バイロンが長編詩としても残している、17世紀セビーリャ(スペイン)の若き放蕩好色男≪ドン・ジュアン≫を主題として制作された作品である。



【くじ引きをおこなう搭乗員たち】
精魂尽き果てた様子の男。画面中央へ配される何とも頼りない小船の上には、ドン・ジュアンを始め、数多くの人が乗り込んでおり、搭乗員は必ずいずれかの者が食料として犠牲となるくじ引きをおこなっているものの、その様子は動的な迫力というよりも高ぶる緊張感と高揚感に溢れている。



【精魂尽き果てた様子の男】
荒涼した海上の様子。ドラクロワは初期作『ダンテの小船』を始め、その生涯の中で小船の乗る人々をモティーフとした作品を複数手がけているが、本作の荒涼とした海上の雰囲気や様々な感情が渦巻く搭乗員らの微妙な感情表現には特に注目すべき点が多い。



【荒涼した海上の様子】

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