Description of a work (作品の解説)
2008/12/21掲載
Work figure (作品図)
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聖家族(エジプトへの逃避途上の休息)

 1715年頃
(Sainte Famille (Repos pendant la fuite en Egypte))
129×97.2cm | 油彩・板 | エルミタージュ美術館

18世紀フランスを代表する大画家であり、ロココ美術随一の巨匠アントワーヌ・ヴァトーの数少ない宗教画の傑作『聖家族(エジプトへの逃避途上の休息)』。本作に描かれる主題は、ユダヤの王ヘロデが、やがて己の地位を脅かす存在になる神の子イエスの存在を恐れ、ベツレヘムに生まれる2歳以下の新生児の全てを殺害するために兵士を放ったものの、聖母マリアの夫である聖ヨセフが天使から「幼エジプトへ逃げよ」と託宣を受け、聖母マリアと幼子イエスを連れエジプトへと逃避する場面≪エジプトへの逃避途上の休息≫である。画面中央に聖母マリアの腕に抱かれる幼き神の子イエスが無垢でありながら同時に威厳も感じられる表情を浮かべた姿で配されており、そのすぐ左側にはイエスの聖性と神との直接的なつながりを示す、聖三位一体の一位である白い鳥の聖霊が描かれいる。そしてその上部には我が子に慈愛の眼差しを向ける聖母マリアと義父となる聖ヨセフが描かれているが、その表情にはどこかイエスの受難を危惧するかのような物悲しさを感じさせる。さらにその上部には2組と3組に分けられた頭部のみの天使が五体配されており、本主題の大いなる父なる神の正当性を暗示している。本作で最も注目すべき点は、ヴァトー独特の陰鬱的な雰囲気表現と、豊かな色彩の描写にある。神の子イエスと聖霊は画面中で最も明るい光に包まれており、彼らの存在そのものが奇蹟あることを表しているかのようであるが、逆に聖ヨセフの顔や身体には深い影が落されており、この強い明暗の対比は観る者にある種の不安を抱かせる。また空の色に用いられる深い青色と岩々の赤褐色の色彩的対比は、聖母マリアの身に着ける伝統的な聖衣服と呼応しており、画家の優れた色彩感覚が感じられる。


【全体図】
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幼子イエスと聖三位一体の一位である聖霊。画面中央に聖母マリアの腕に抱かれる幼き神の子イエスが無垢でありながら同時に威厳も感じられる表情を浮かべた姿で配されており、そのすぐ左側にはイエスの聖性と神との直接的なつながりを示す、聖三位一体の一位である白い鳥の聖霊が描かれいる。



【幼子イエスと聖霊】
どこか不安げな印象を受ける聖母マリアと聖ヨセフの姿。神の子イエスと聖霊は画面中で最も明るい光に包まれており、彼らの存在そのものが奇蹟あることを表しているかのようであるが、逆に聖ヨセフの顔や身体には深い影が落されており、この強い明暗の対比は観る者にある種の不安を抱かせる。



【聖母マリアと聖ヨセフの姿】
画面上部に配される頭部のみの天使。本主題の大いなる父なる神の正当性を暗示している天使らの背後の空の色に用いられる深い青色と岩々の赤褐色の色彩的対比は、聖母マリアの身に着ける伝統的な聖衣服と呼応しており、画家の優れた色彩感覚が感じられる。



【画面上部に配される頭部のみの天使】

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