Description of a work (作品の解説)
2008/06/30掲載
Work figure (作品図)
■ 

見通し

 (La Perspective) 1714-1716年頃
46.7×55.3cm | 油彩・画布 | ボストン美術館

ロココ美術の画家アントワーヌ・ヴァトー初期の重要な作品のひとつ『見通し』。本作は画家の友人であり重要なパトロンでもあったフランス財務長官ピエール・クロザが所有していたパリ近郊モンモランシーの邸宅(別荘)の庭園を舞台のモデルとして描かれた作品で、表現様式的特徴からヴァトーの重要な作品の中では比較的初期頃(1714-16年頃)に描かれたと推測されている。本作で最も注目すべき点は、中央で明確に隔てられた空間の構成にある。画面の中央から左右に中景となる森林が対称的に配され、中央に空けられた遠景にはクロザ所有の邸宅が見えている(画家はしばしばこの邸宅と訪れており、その時に手がけたデッザンが現在でも残されている)。このような空間構成はヴァトーの作品では珍しく、それ故に本作は画家の表現的な発展を研究する上でも特に重要視されている。また本作に登場する若い男女や子供らの姿は当時、流行した衣服と古典的な衣服が混在して描かれており、現実と非現実(理想)とが入り混じった表現も特に注目すべき点である。画面左側の近景には、若い男女が三組描かれており、女性は当時の流行を取り入れた衣服を、男性は古典的な衣服を身に着けている。三組の内、最も画面左端に描かれる男女は男性がエスコートしながら森林の奥へと誘っているかのようである。そのすぐ右側では大地に腰を下ろした男が楽器を弾きながら女に何かを語っている。さらにその奥の男女は男性が木に寄り掛かりながら、艶やかな黄色の衣服に身を包む女性に語らいかけている。画面中央、そして画面左部分には森林の間から見える庭園を眺める男女と、遊んでいるかのような仕草を見せる子供らが描かれていることが確認できるが、画面の損傷が著しい為に、その奥へ描かれる夫人らしき人物など詳細を見出すのは困難である。しかし本作の洗練された木々の描写や安定的で成熟を感じさせる空間構成からは、ヴァトーの雅宴画(フェート・ギャラント)の確立と大成を予感させる。


【全体図】
拡大表示
女性を森林の奥へと誘う若い男。本作は画家の友人であり重要なパトロンでもあったフランス財務長官ピエール・クロザが所有していたパリ近郊モンモランシーの邸宅(別荘)の庭園を舞台のモデルとして描かれた作品である。



【女性を森林の奥へと誘う若い男】
森林の間から覗く美しい邸宅。本作で最も注目すべき点は、中央で明確に隔てられた空間の構成にあり、画面の中央から左右に中景となる森林が対称的に配され、中央に空けられた遠景にはクロザ所有の邸宅が見えている。



【森林の間から覗く美しい邸宅】
高度に洗練された木々の描写。表現様式的特徴からヴァトーの重要な作品の中では比較的初期頃(1714-16年頃)に描かれたと推測されている本作の洗練された木々の描写や安定的で成熟を感じさせる空間構成からは、ヴァトーの雅宴画(フェート・ギャラント)の確立と大成を予感させる。



【高度に洗練された木々の描写】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ