Description of a work (作品の解説)
2008/07/21掲載
Work figure (作品図)
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ジェルサンの看板

 (Enseigne de Gersaint) 1720年
166×306cm | 油彩・画布 | シャルロッテンブルク城

ロココ美術の大画家アントワーヌ・ヴァトーが最晩年に手がけた傑作『ジェルサンの看板』。本作は画家が1719年から一年間ほど滞在していたロンドンからパリへ帰国した1720年に、友人であった画商ジェルサンがノートルダム橋沿いで経営していた画廊の入り口用の看板として制作された作品で、建物の正面(ファサード)がアーチの形であった為に、画面内にはそれに合わせたことを示すアーチ状の痕跡が確認できる。ジェルサンによる伝説的な言い伝えによると、1720年の秋から翌年までの間の8日間で制作されたとされる本作ではあるが、何らかの理由により僅か2週間ほどで別の看板と入れ替えられたことが知られている。画面の中央から2画面で構成される本作では、絵画を見定める客とそれを勧める画商の様子が描かれており、その内容は画廊の看板という明確な目的の為の(ある種の)だまし絵的な展開が示されている。画面左側ではフランス古典主義の巨匠で、ヴァトーの前時代で最も活躍した画家でもあるシャルル・ル・ブランが手がけた国王ルイ14世の肖像画を始めとした古典的な絵画を木箱に片付ける男ら(従者)、そして洗練された薄桃色のドレスを身に着けた若い婦人(顧客)を導く男の姿が描かれている。一方、画面右側ではロココ的な裸婦が多数描かれている楕円形の絵画を身なりの良い顧客に売り込む画商や、帳場で小品を品定めする男女らが描かれている。一見すると当時の画廊の活気溢れた情景であるものの、一部の研究者からは画面左側の若い婦人を導く男をヴァトー自身と、画面右側の楕円形の絵画を勧める画商を依頼主ジェルサンと、画面右端の帳場の裏で小品を進める女性をジェルサンの妻とする解釈が唱えられている。さらにこの解釈から古典的な旧様式から当時(ロココ時代)に相応しい新様式へと導くヴァトーの画家としての自負を見出す研究者もあるが、この説は異論も多く、現在でも議論が続けられている。


【全体図】
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木箱へ丁寧に片付けられる国王ルイ14世の肖像画。ジェルサンによる伝説的な言い伝えによると、1720年の秋から翌1721年までの間の8日間で制作されたとされる本作ではあるが、何らかの理由により僅か2週間ほどで別の看板と入れ替えられたことが知られている。



【片付けられる国王ルイ14世の肖像画】
若い女性を帳場の方へと誘う男。一部の研究者からは画面左側の薄桃色のドレスを身に着けた若い婦人(顧客)を導く男をヴァトー自身と、画面右側の楕円形の絵画を勧める画商を依頼主ジェルサンと、画面右端の帳場の裏で小品を進める女性をジェルサンの妻とする解釈が唱えられている。



【若い女性を帳場の方へと誘う男】
ロココ的な裸婦が多数描かれている楕円形の絵画を見定める身なりの良い顧客。画面の中央から2画面で構成される本作では、絵画を見定める客とそれを勧める画商の様子が描かれており、その内容は画廊の看板という明確な目的の為の(ある種の)だまし絵的な展開が示されている。



【楕円形の絵画を見定める顧客】
当時の使用を示すアーチ状の痕跡。本作は友人であった画商ジェルサンがノートルダム橋沿いで経営していた画廊の入り口用の看板として制作された作品で、建物の正面(ファサード)がアーチの形であった為に、画面内にはそれに合わせたことを示すアーチ状の痕跡が確認できる。



【当時の使用を示すアーチ状の痕跡】

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