Description of a work (作品の解説)
2009/07/09掲載
Work figure (作品図)
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アイネイアスの称揚

 (Apoteosi di Enea) 1765-66年
約1600×2300cm | フレスコ | マドリッド王宮

18世紀イタリア最高の画家ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ晩年の代表作『アイネイアスの称揚(アイネイアスの栄光)』。本作はスペイン国王カルロス3世の招きでスペインのマドリッドへ赴いたティエポロが同地の王宮の天井装飾画として手がけた作品の中の1点で、神話上の英雄≪アイネイアス≫とスペイン王家の起源的正統性を画題に制作されている。マドリッド王宮「近衛兵の間」に描かれる本作の画題≪アイネイアスの称揚≫の選定理由としては、神話において美の女神ヴィーナスとトロイア王家の間に生まれた皇子アイネイアスが、故郷トロイア滅亡後、ローマを探す旅の途中で西方の伝説の国スペリア(※当時はこの伝説の国スペリアこそスペインだと考えられていた)へ立ち寄ったとされる逸話から、スペイン王家がその正統性を示す為(又はその起源を示す為)であると現在では考えられている。画面中央よりやや左下に配される英雄アイネイアスは複数の従者や天使を伴いながら、偉大なる母である美の女神ヴィーナスの許へと上昇している。アイネイアスの視線の先には母である美の女神ヴィーナスがやや見下ろした表情で配されており、その姿は美の化身に相応しい優美で神々しい姿態である。画面下部には時の翁や美の女神ヴィーナスがアイネイアスへ与えた剣を鍛えた火の神ウルカヌスとその鍛冶場など、アイネイアスに関連する神話上の人物(神々)が配されており、英雄アイネイアスの、ひいてはスペイン王家の偉大性が示されている。本作に用いられた表現的にはイリュージョン的な表現を抑えた、ティエポロ晩年期の様式の典型となる、やや平坦な表現が顕著で、硬質的かつ冷謐的な印象を観る者に与えるものの、豊かな色彩と、うねりにも似た大胆な構図展開は今なお色褪せることなく我々を感動させる。


【全体図】
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母なる美の女神ヴィーナスへと近づく英雄アイネイアス。本作はスペイン国王カルロス3世の招きでスペインのマドリッドへ赴いたティエポロが同地の王宮の天井装飾画として手がけた作品の中の1点で、神話上の英雄≪アイネイアス≫とスペイン王家の起源的正統性を画題に制作されている。



【ヴィーナスへと近づく英雄アイネイアス】
アイネイアスを待ち受ける美の女神ヴィーナス。画題≪アイネイアスの称揚≫の選定理由としては、英雄アイネイアスが、故郷トロイア滅亡後、ローマを探す旅の途中で西の国スペリアへ立ち寄ったとされる逸話から、スペイン王家がその正統性を示す為(又はその起源を示す為)であると現在では考えられている。



【アイネイアスを待ち受けるヴィーナス】
火の神ウルカヌスとその鍛冶場。本作に用いられた表現的にはイリュージョン的な表現を抑えた、ティエポロ晩年期の様式の典型となる、やや平坦な表現が顕著で、硬質的かつ冷謐的な印象を観る者に与えるものの、豊かな色彩と、うねりにも似た大胆な構図展開は今なお色褪せることなく我々を感動させる。



【火の神ウルカヌスとその鍛冶場】

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