Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール Maurice Quentin de La Tour
1704-1788 | フランス | ロココ美術・肖像画家




18世紀に活躍した盛期ロココ様式を代表する肖像画家。パステルでの絵画表現に大きな可能性を見出し、独自的なパステル表現を確立。画家が生涯を掛けて探求したパステル独特の軽やかで速筆的な質感や、油彩手法とは異なる繊細で柔らかな表現、輝きを帯びた色彩を用いて制作された肖像画は、生を謳歌する人々を表現したロココ様式の精神性や表現手法と非常に相性が良く、当時の人々に多大な称賛を以って迎えられた。また描く対象の内面を反映させたかのような豊かで複雑な表情の描写も特筆に値するものである。1704年、フランス北部エーヌ県の小都市(自治区)サン=カンタンに住んでいた中流階級の一族の息子のひとりとして生を受ける。その後、1719-20年頃に若くしてパリへと旅立ち、1720年前後から(当時)フランス国内で大流行していたイタリアの女流パステル画家カッリエーラの作品に触れ、大きな衝撃を受ける。以後、独学でパステルの描写手法を研究し、貴族階級の人々や哲学者など知識人たちの肖像画を手がける。1746年、パステル肖像画家として王立絵画・彫刻アカデミーの会員となる。その後も代表作となる『ポンパドゥール夫人の肖像』を始めとし、名だたる上流階級の人々の肖像画を手がけ画家として確固たる地位と圧倒的な人気を得るものの、年を重ねるごとに精神を病んでしまい、晩年期頃には完成した作品へさらに手を加え作品を台無しにしてしまうなど奇行が目立つようになる。1788年、パリで死去。気難しく短気な性格と伝えられたモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールではあったが、画家の手がけたパステルによる数多くの肖像画は、現在もロココ様式を代表する絵画作品として広く認知されている。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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ジャボットを着た自画像

 (Self-portrait) 1751年頃
64×53cm | パステル・紙 | ピカルディー美術館(アミアン)

ロココ時代に活躍したパステル画家モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールが手がけた同様式による最も著名な自画像作品のひとつ『ジャボットを着た自画像』。本作は1751年頃に制作されたと推測されているモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールの自画像作品で、画家はその生涯で数多くの自画像を手がけているが、本作はその中でも最も完成度と知名度が高い作品でもある。ジャン=マルク・ナティエなど当時の著名な肖像画家たちが確立した、神話を思わせるやや重々しい背景空間の中へ、顔は斜めに、身体はほぼ真横に向けた姿で画家自身が配されており、優美で流行的なジャボット(レースの飾り襞の付いた衣服)を身に着けたその姿はラ・トゥールが手がけた多くの肖像画に共通する上品な軽やかさと優雅さに溢れている。本作中で最も観る者の印象に残る、自信に満ち溢れたかのような得意気なラ・トゥールの表情は、18世紀フランスにおけるパステル画の第一人者としてのみならず、ひとりの芸術家(画家)としての確固たる信念と、揺るぎない己の自信を自ら表しているようであり、不思議と嫌味無く観る者を強く惹きつける。また本作ではそのパステル表現に注視しても、繊細な明暗対比や色彩の微妙な変化、基本的には軽快でありながらも適度に濃密さを感じさせる各箇所の質感表現などはラ・トゥールの卓越した技量によって示されたパステルの魅力そのものであり、本作でも特に注目すべき点のひとつである。

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ポンパドゥール夫人の肖像(マダム・ド・ポンパドゥール)


(Portrait de Mme Pompadour) 1755年
175×128cm | パステル・紙 | ルーヴル美術館素描室

パステル画家モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールが手がけたロココ様式随一となる肖像画の傑作『ポンパドゥール夫人の肖像(マダム・ド・ポンパドゥール)』。本作は当時のフランス国王ルイ15世の公妾(公式の愛妾)であり、ロココ様式や文化の形成に多大な影響を与えた≪ポンパドゥール侯爵夫人≫が35歳の頃の肖像画で、侯爵夫人の弟マリニー候から依頼され制作された作品ある。ポンパドゥール侯爵夫人は平民階級出身ながら、その美貌と幼少期から受けてきた教育・教養の高さから、当時のフランス国王ルイ15世の公妾(公式の愛妾)の地位と、それによる絶大な権力を得るに至るまで登りつめた女性で、同時期を代表する画家フランソワ・ブーシェなど数多くの画家がポンパドゥール侯爵夫人の肖像画を制作しているが、本作はその最も代表的な作品と位置付けられており、画家自身もパステル画が油彩画に劣らないことを示す目的で本作を手がけたとの記述も残されている。画面中央にやや斜めに首を傾げるポンパドゥール侯爵夫人が描かれているが、その表情は憂いを帯びながらも凛とした意思と志の高さを感じさせる。この表情はポンパドゥール夫人が当時置かれていた状況(夫人は絶大な権力と政治的影響を有していた故に敵も多かった)への複雑な心情を反映したものであり、本作のような対象の人物の内面にまで迫った真実性に満ちた表情の描写こそ、ラ・トゥールの肖像表現中核のひとつであり、観る者に強い印象を残すのである。さらにパステル独特の軽快な質感による輝きを帯びたドレスの表現や装飾品・家具の描写も特に注目すべき点のひとつである。またポンパドゥール侯爵夫人が手にする楽譜や画面左側(夫人の座る椅子の奥)に配される楽器は音楽を、画面右側の豪華な机の上に描かれる地球儀や『法の精神』第三巻、『百科事典』第四巻など当時の最先端の知識を詰め込んだ書物は学問、高い教養を、その下の(おそらくは夫人が描いたと思われる)デッサンは芸術を意味しており、ポンパドゥール侯爵夫人の当時の文化に対する高い関心と貢献を表している。

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