Description of a work (作品の解説)
2008/12/05掲載
Work figure (作品図)
■ 

手紙を読む婦人(思い出)

 (La Lettre) 1776年頃
38×30cm | 油彩・画布 | 個人所蔵(米国)

ロココ様式最後の巨匠ジャン・オノレ・フラゴナールが手がけた美しい人物画の小作『手紙を読む婦人(思い出)』。本作は肘を突きながら頬に手を当て手紙を読む若い婦人を単身で描いた作品で、本主題≪手紙を読む婦人≫はフラゴナールが強く影響を受けていたことが判明している17世紀オランダ絵画黄金期にしばしば登場した主題でもある。画面のほぼ中央に左手て手紙を持ち、薄っすらと笑みを浮かべながら手紙の内容に視線を向ける頬を赤く染めた若い婦人が描かれており、その微睡にも似た柔らかく穏やかな表情は、遠き日の(本作の別名称となる)『思い出』に浸っているようにも見える。この若い婦人の画面内に見える上半身の姿態は緊張によって硬直を起こすことなく非常に自然な姿で描写されており、本作の落ち着いた女性的な雰囲気や全体に漂う穏健な空気をより強調している。また本作の描写手法に注目しても、頭部にハイライトを描き込みつつ、顔面には薄影を落すという陰影表現は、光の効果を人物の感情表現(そして画面の雰囲気の表現)へ最大限に活かした手法であり、フラゴナールの繊細ながら非常に計算された構成を見出すことができる。さらにフラゴナールの大きな特徴である大きく動きの早い筆致による闊達な筆捌きは、特に若い婦人の身に着ける衣服の襞で絶妙な質感表現となって表れているほか、衣服に用いられる白色、黒色、赤色の色彩と、やや黄色味を帯びた肌の色彩との対比も特に注目すべき点である。


【全体図】
拡大表示
微睡にも似た柔らかく穏やかな表情。薄っすらと笑みを浮かべながら手紙の内容に視線を向ける頬を赤く染めた若い婦人が描かれており、その微睡にも似た柔らかく穏やかな表情は、本作の別名称となる『思い出』に浸っているようにも見える。



【微睡にも似た柔らかく穏やかな表情】
素早く動きを感じさせる画家独特の筆触。頭部にハイライトを描き込みつつ、顔面には薄影を落すという陰影表現は、光の効果を人物の感情表現(そして画面の雰囲気の表現)へ最大限に活かした手法であり、フラゴナールの繊細ながら非常に計算された構成を見出すことができる。



【動きを感じさせる画家独特の筆触】
若い婦人が手にする手紙。本作は肘を突きながら頬に手を当て手紙を読む若い婦人を単身で描いた作品で、本主題≪手紙を読む婦人≫は画家が強く影響を受けていたことが判明している17世紀オランダ絵画黄金期にしばしば登場した主題でもある。



【若い婦人が手にする手紙】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ