Description of a work (作品の解説)
2008/04/14掲載
Work figure (作品図)
■ 

ぶらんこ

 (Balançoire) 1765年頃
216×185.5cm | 油彩・画布 | National Gallery (Washington)

ロココ美術の巨匠ジャン・オノレ・フラゴナールが手がけた風俗画の代表的作例のひとつ『ぶらんこ』。かつては有力な画家の庇護者であったサン=ノン師が所有していたと推測されている本作に描かれる画題は、現在までにフラゴナールによる作例が3点確認されている≪ぶらんこ≫で、本来は本作同様、ワシントン・ナショナル・ギャラリーに所蔵される『目隠し鬼ごっこ』と合わせて一枚の作品であったと推測されている(※≪目隠し鬼ごっこ≫と≪ぶらんこ≫の合成図を参照)。また本作と目隠し鬼ごっこは18世紀の段階で既に切り分けられていたことがワシントン・ナショナル・ギャラリーの調査によって判明している。さらに現在パリのフランス銀行が所蔵する『サン=クルーの祭り』が、本作や『目隠し鬼ごっこ』と高さがほぼ同一であることから、これらは同じ依頼主から注文され手がけられた作品で、同室内に飾られていたとも考えられている(これが正しければサン=クルーの祭りはパンティエーヴル公の邸宅の装飾画として制作されていることが判明していることから、本作もそれと同じ目的で制作されたことになる)。画面下部中央に描かれる桃色と黄色の衣服に身を包んだ、ぶらんこに乗る若い女性は地面に寝そべり会話を楽しむ複数の男女らの集団に手を振っており、このぶらんこ(に乗る行為)は、ロココ美術が隆盛していた18世紀においては性行為を暗示するものである。また地面で手を振り返す若い男女らも、ぶらんこに乗る女性の揺れる着衣(スカート)の奥を覗き見る行為を楽しんでいる。輝くような光に包まれたこの男女たちの集団や、彼女らが享楽に耽る場所として描かれる美しい森や自然、遠景の色彩はどこまでも軽やかで、そこには人生の苦しみや苦痛(の色)は一切感じさせない。これらの色彩表現や典雅性、快楽性こそロココ様式の典型であり、本作は画家の作品の中でも特にそれらを感じさせる代表作のひとつして数えられている。また靄がかかるような幻想的な森林の描写も秀逸の出来栄えであり、このようなフラゴナールの樹木表現は、同時代の英国の画家ゲインズバラにも影響を与えた。

関連:ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵 『目隠し鬼ごっこ』
関連:≪目隠し鬼ごっこ≫と≪ぶらんこ≫の合成図
関連:フランス銀行所蔵 『サン=クルーの祭り』


【全体図】
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ぶらんこから手を振る若い女性。かつては有力な画家の庇護者であったサン=ノン師が所有していたと推測されている本作に描かれる画題は、現在までにフラゴナールによる作例が3点確認されている≪ぶらんこ≫である。



【ぶらんこから手を振る若い女性】
望遠鏡でぶらんこの女性を見る若い男女。このぶらんこ(に乗る行為)は、ロココ美術が隆盛していた18世紀においては性行為を暗示するものである。また地面で手を振り返す若い男女らも、ぶらんこに乗る女性の揺れる着衣(スカート)の奥を覗き見る行為を楽しんでいる。



【望遠鏡でぶらんこの女性を見る男女】
本作に描かれる美しい風景。輝くような光に包まれたこの男女たちの集団や、彼女らが享楽に耽る場所として描かれる美しい森や自然、遠景の色彩はどこまでも軽やかで、そこには人生の苦しみや苦痛(の色)は一切感じさせない。



【本作に描かれる美しい風景】
靄がかかるような幻想的な森林の描写。本作は『目隠し鬼ごっこ』と合わせて一枚の作品であったと推測されている(※≪目隠し鬼ごっこ≫と≪ぶらんこ≫の合成図を参照)ほか、本作と目隠し鬼ごっこは18世紀の段階で既に切り分けられていたことがワシントン・ナショナル・ギャラリーの調査によって判明している。



【幻想的な森林の描写】

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