Description of a work (作品の解説)
2009/03/03掲載
Work figure (作品図)
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棄てられて(物思い)

 (Abandonnée ou Réverie) 1790-91年
317.8×197.1cm | 油彩・画布 | フリック・コレクション

18世紀後期ロココ様式最後の巨匠ジャン・オノレ・フラゴナール晩年の重要な作品『棄てられて(物思い)』。本作は貧民階級層の出身ながら、当時のフランス国王ルイ15世の愛妾(公妾)となり、宮廷内で絶大な権力を得ていたデュ・バリー夫人の依頼によって制作された4点の連作『恋の成り行き』に後年付け加えられた5点目の作品である。本作に描かれるのは、ひとりの若い娘が鬱蒼と葉を茂らせる庭園の円柱の下で物思いに耽る女性であるが、その失恋の悲しみに満ちた表情や仕草、そして円柱の上に配される一体の愛の神キューピッドなどは連作『恋の成り行き』で最高潮にまで達した若い恋人たちのその後を如実に連想させる。本作の解釈としてはルイ15世の死後、急速に権力を失墜させたデュ・バリー夫人を暗示するとする説や、ロココ美術最大の立役者であったブルボン王朝(君主制)の崩壊で過ぎ去りし日となった、当時の幸福的で甘美なひと時に対する憧憬、又は無常の念を表したとする説が有力視されている。表現手法や様式に注目してみると、以前手がけた4作と比較し明らかに即興性や豊潤な色彩描写、細部の処理に劣機が感じられるものの、画面全体から醸し出される儚げでメランコリックな雰囲気には、フランス革命後にフラゴナールが置かれた非恵沢的な状況による憂鬱な精神性が強く感じられる。連作『恋の成り行き』は新古典様式で改装されたルーヴシエンヌの館に合わないとして、制作後間もない1773年にフラゴナールへと返却されたものの、画家が故郷グラッスへと帰郷した際に本作を加えて従弟の邸宅の装飾に用いたと伝えられている。


【全体図】
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失恋の悲しみに満ちた表情を見せる若い娘。本作は貧民階級層の出身ながら、当時のフランス国王ルイ15世の愛妾(公妾)となり、宮廷内で絶大な権力を得ていたデュ・バリー夫人の依頼によって制作された4点の連作『恋の成り行き』に後年付け加えられた5点目の作品である。



【悲しみに満ちた表情の若い娘】
円柱の上に配される一体の愛の神キューピッド。以前手がけた4作と比較し明らかに即興性や豊潤な色彩描写、細部の処理に劣機が感じられるものの、画面全体から醸し出される儚げでメランコリックな雰囲気には、フランス革命後にフラゴナールが置かれた非恵沢的な状況による憂鬱な精神性が強く感じられる。



【一体の愛の神キューピッド】
劣機が感じられる細部の処理。本作の解釈としてはルイ15世の死後、急速に権力を失墜させたデュ・バリー夫人を暗示するとする説や、ロココ美術最大の立役者であったブルボン王朝の崩壊で過ぎ去りし日となった、当時の幸福的で甘美なひと時に対する憧憬、又は無常の念を表したとする説が有力視されている。



【劣機が感じられる細部の処理】

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