Description of a work (作品の解説)
2009/03/02掲載
Work figure (作品図)
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桃の籠(桃とバスケットと胡桃)


(Corbeille de pêches avec couteau) 1768年
32.5×39.5cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

18世紀に活躍したフランス絵画の巨匠ジャン・シメオン・シャルダン晩年を代表する静物画のひとつ『桃の籠(桃とバスケットと胡桃)』。制作年記の記される最後の静物画としても知られる本作は、籠の上に乗せられた桃を中心に葡萄酒の入ったグラスとナイフ、ふたつの胡桃(クルミ)を配した作品である。画面のほぼ中央へ配される籠に乗せられた複数の桃は甘く豊潤な香りさえ感じさせるほど瑞々しく正確な球形で描写されている。籠の下には一本のやや小ぶりなナイフがテーブルからはみ出すように配されており、画面に奥行きと立体感を与えることに成功している。画面左側には葡萄酒(ワイン)が入るのであろう透明なガラス素材のグラスがひとつ配されており、ナイフと共に本作へ(桃や籠の柔らかさと対照的な)硬質性や人工性を与えている。さらに画面右側には自然界の硬質としてふたつの胡桃が配されているが、その中のひとつは外殻が半分に割られ中の実が露わとなっている。本作に示される軟質と硬質の対比も画家の静物画の大きな特徴として特に注目すべき点であるが、それと同様に本作から感じられる時間的概念や静物そのものが醸し出すかのような独特な雰囲気の表現にも眼を向ける必要がある。本作に描かれる桃が夏に収穫を迎える果物に対して左右の葡萄酒や胡桃の本格的な収穫時期は秋であることから、本作には静物による時間的な経過と概念が本質に取り入れられているのは明白であり、本作のように極限まで描く対象を絞り込むことによってそれらは的確に観る者へと伝わらせている。さらに静物個々個々が圧倒的な存在感を醸し出しながらも、シャルダンの卓越した表現力によって画面の中で見事に調和を示しており、観る者を違和感無く描かれる世界観へと惹き込むのである。


【全体図】
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画面中央へと配される瑞々しい桃。画面のほぼ中央へ配される籠に乗せられた複数の桃は甘く豊潤な香りさえ感じさせるほど瑞々しく正確な球形で描写されている。籠の下には一本のやや小ぶりなナイフがテーブルからはみ出すように配されており、画面に奥行きと立体感を与えることに成功している。



【画面中央へと配される瑞々しい桃】
葡萄酒の入ったグラス。制作年記の記される最後の静物画としても知られる本作の画面左側には葡萄酒が入るのであろう透明なガラス素材のグラスがひとつ配されており、ナイフと共に本作へ硬質性や人工性を与えている。



【葡萄酒の入ったグラス】
自然界の硬質物である胡桃。本作に示される軟質と硬質の対比も画家の静物画の大きな特徴として特に注目すべき点であるが、それと同様に本作から感じられる時間的概念や静物そのものが醸し出すかのような独特な雰囲気の表現にも眼を向ける必要がある。



【自然界の硬質物である胡桃】

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