Description of a work (作品の解説)
2008/10/31掲載
Work figure (作品図)
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手紙に封をする女(手紙に封をする婦人)


(Femme occupée à cacheter une lettre) 1733年
146×147cm | 油彩・画布 | シャルロッテンブルク城

18世紀フランス絵画の巨匠ジャン・シメオン・シャルダンが手がけた最初の風俗画作品と推測される代表作『手紙に封をする女(手紙に封をする婦人)』。1734年にドーフィヌ広場で開催された青年美術家展や、1738年のサロンへの出品作である本作に描かれる画題は、ヨハネス・フェルメールやピーテル・デ・ホーホ、テル・ボルフなど17世紀オランダ絵画黄金期に流行した代表的な画題のひとつである≪手紙(恋文)≫である。画面中央にはおそらく夫を持つ身であろう若い婦人が、蝋燭から付け木に炎を移している召使の男を急かすかのように(恋人に宛てたのだろう)一通の手紙と封用の赤い蝋燭を差し向けている。さらに若い婦人の膝近くには(恋人への)忠実を意味する一匹の犬がじゃれつくように配されている。本作のシャルダンの作品にしてはやや珍しい豪華な室内の描写や若い婦人の恋に胸躍らせる姿と召使の冷静な態度の見事な感情の対比も特に注目すべき点であるが、本作で最も特筆すべき点は当時の批評家たちからも称賛を受けた非常に高度な写実的表現と対象を効果的に浮かび上がらせている光源処理にある。特に画面中央の若い婦人の輝くような白い肌と紅潮する頬の美しい描写や髪の毛の繊細な表現、質の高さを感じさせる品の良い衣服の質感表現、羽根ペンなどが乗せられる赤いテーブルクロスの細密な描写などはこの頃、すでにシャルダンの画力が傑出していたことを良く表している。またやや低い視点からアプローチされる本作の婦人と召使で形作られる三角形の安定的な構図展開や空間構成、多様な色味を感じさせる豊かな色彩表現なども、我々の眼を今も惹きつける大きな要因のひとつとなっている。


【全体図】
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恋に胸躍らせる若い婦人の姿。1734年にドーフィヌ広場で開催された青年美術家展や、1738年のサロンへの出品作である本作に描かれる画題は、フェルメールなど17世紀オランダ絵画黄金期に流行した画題のひとつである≪手紙(恋文)≫である。



【恋に胸躍らせる若い婦人の姿】
婦人が手にする手紙と赤い蝋燭。本作のシャルダンの作品にしてはやや珍しい豪華な室内の描写や若い婦人の恋に胸躍らせる姿と召使の冷静な態度の見事な感情の対比も特に注目すべき点である。



【婦人が手にする手紙と赤い蝋燭】
蝋燭から付け木に炎を移す召使の冷静な態度。画面中央の若い婦人の輝くような白い肌と紅潮する頬の美しい描写や髪の毛の繊細な表現などはこの頃、すでにシャルダンの画力が傑出していたことを良く表している。



【付け木に炎を移す召使の冷静な態度】

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