Description of a work (作品の解説)
2009/01/16掲載
Work figure (作品図)
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家庭教師

 (La Gouvernante) 1738年
46.7×37.5cm | 油彩・画布 | カナダ国立美術館(オタワ)

ロココ様式時代を代表するフランスの画家ジャン・シメオン・シャルダンによる風俗画の典型例的な作品のひとつ『家庭教師』。制作された翌年となる1739年のサロンに出品され、デフォンテーヌ師より多大な称賛を浴びた本作は、幼さの残る少年に対して訓告する家庭教師の情景を描いた作品で、本作によって画家は確固たる名声を得たとの記録も残されている。画面右側には仕立ての良さを感じさせる厚生地の帽子へブラシをかける(毛並みを整える)作業を中断し、厳しいが決して怒りではない表情を浮かべながら少年を諭すかのように訓告する家庭教師の姿が配されている。その反対側(画面左側)へは節目がちに視線を下へと向けた(どこか不満げにも見える)少年が行儀正しく直立する姿が配されており、二人の2人の日常的な関係性が明確になっている。少年の周囲にはカード(トランプ)や羽根、ラケットなど遊戯道具が散乱しており、家庭教師から訓告を受ける直前まで少年が、これらを使用しながら興じていたことを窺い知ることができる。本作で最も注目すべき点は家庭的な日常生活に対する克明な描写とその姿勢や、自然主義的な場面の捉え方にある。本作に描かれる2人の人物(家庭教師と少年)の仕草や表情は、日常をそのまま切り取ったかのように自然的であり、バロック絵画のような演劇性や感情の強調的表現は皆無である。このような日常の出来事を観る物がその経験を以って感じることのできる表現こそ、シャルダンが確固たる評価を得た最も大きな要因のひとつであり、それは今なお色褪せることなく我々にも強い感銘を与える。また場面全体を柔らかく包み込むような光の表現や細やかな気配りが施された調和的な色彩が、簡素な場面構成と相互作用し合い、本作の日常性を無理なく強調している点も特筆に値するものである。


【全体図】
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少年を諭すように訓告する家庭教師。画家の名声を確立したとの記録も残される本作の画面右側には仕立ての良さを感じさせる厚生地の帽子へブラシをかける(毛並みを整える)作業を中断し、厳しいが決して怒りではない表情を浮かべながら少年を諭すかのように訓告する家庭教師の姿が配されている。



【少年を諭すように訓告する家庭教師】
家庭教師に諭され俯く少年の姿。1739年のサロンに出品され、デフォンテーヌ師より多大な称賛を浴びた本作の画面左側へは節目がちに視線を下へと向けた(どこか不満げにも見える)少年が行儀正しく直立する姿が配されており、二人の2人の日常的な関係性が明確になっている。



【家庭教師に諭され俯く少年の姿】
直前まで使用されていたことを物語る散乱した遊戯道具。本作に描かれる2人の人物(家庭教師と少年)の仕草や表情は、日常をそのまま切り取ったかのように自然的であり、バロック絵画のような演劇性や感情の強調的表現は皆無である。



【散乱した遊戯道具】

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