Description of a work (作品の解説)
2008/04/13掲載
Work figure (作品図)
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エウロペの略奪

 (Enlèvement d'Europe)
1740-42年頃(又は1734-36年) | 321×270cm | 油彩・画布
ウォーレス・コレクション(ロンドン)

ロココ美術随一の画家フランソワ・ブーシェが手がけた神話画の代表作『エウロペの略奪』。制作目的や意図の詳細は不明であるものの、かつてバザンの収集品陳列室に置かれるほか、オルレアンの財政収集総監を務めた貴族ワトゥレが所蔵するなど来歴は明確である本作に描かれる主題は、ギリシャ神話の中でも最も著名な逸話のひとつ≪エウロペの略奪≫で、本作同様、ウォーレス・コレクションが所蔵する『ニンフたちに幼いデュオニソスを託すメルクリウス』と対画作品としても知られている。本主題≪エウロペの略奪≫は、フェニキアの都市テュロスの王アゲノルの娘エウロペが侍女らと海辺で戯れる姿を見た主神ゼウズが、エウロペを見初め、白く優美な雄牛に姿を変えてエウロペに近づき、(雄牛に)心を許したエウロペが雄牛の背中に乗ると、雄牛(に姿を変えた主神ゼウス)が駆け出し、そのまま海を渡りクレタ島へと連れ去ってしまったという逸話で、本作はエウロペが雄牛の背中に乗る姿を中心に展開している。画面中央に描かれる金髪を風に靡かせた優雅で美しいエウロペの姿態は、しばしばブーシェの王立絵画・彫刻アカデミー入会作品として知られているルーヴル美術館所蔵の『リナルドとアルミーダ』との関連性が指摘されている。またエウロペの周囲を取り囲むかのように配される侍女らの軽やかな運動性や、赤色、青色、白色の三色で構成される花々の豊かな色彩、画面上下に描かれるキューピッドの無邪気な姿態などはロココ様式の典型的な表現であり、観る者を芳しきロココ独特の世界へと誘う。さらに画面左右に描かれる侍女の(特に背中を向ける画面右端の侍女の)エロティックな人体表現は秀逸の出来栄えであるほか、登場人物らによって形成される三角形の構図による本作の安定性も、ブーシェの画家としての高い力量を示したものである。なお本作はかつて画家の師フランソワ・ルモワーヌの作品と考えられていた。

関連:対画 『ニンフたちに幼いデュオニソスを託すメルクリウス』
関連:ルーヴル美術館所蔵 『リナルドとアルミーダ』


【全体図】
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金髪を風に靡かせた優雅で美しいエウロペの姿。本作に描かれる主題は、ギリシャ神話の中でも最も著名な逸話のひとつ≪エウロペの略奪≫で、本作同様、ウォーレス・コレクションが所蔵する『ニンフたちに幼いデュオニソスを託すメルクリウス』と対画作品としても知られている。



【金髪を風に靡かせた美しいエウロペ】
優美な雄牛に姿を変えた主神ゼウス。画面中央に描かれる金髪を風に靡かせた優雅で美しいエウロペの姿態は、しばしばブーシェの王立絵画・彫刻アカデミー入会作品として知られているルーヴル美術館所蔵の『リナルドとアルミーダ』との関連性が指摘されている。



【優美な雄牛に姿を変えた主神ゼウス】
キューピッドの無邪気な姿態。エウロペの周囲を取り囲むかのように配される侍女らの軽やかな運動性や、赤色、青色、白色の三色で構成される花々の豊かな色彩、画面上下に描かれるキューピッドの無邪気な姿態などはロココ様式の典型的な表現であり、観る者を芳しきロココ独特の世界へと誘う。



キューピッドの無邪気な姿態
背中を向ける画面右端の侍女のエロティックな人体表現。この侍女の裸婦表現は本作の中でも秀逸の出来栄えであるほか、登場人物らによって形成される三角形の構図による本作の安定性も、ブーシェの画家としての高い力量を示したものである。



【侍女のエロティックな人体表現】

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