Description of a work (作品の解説)
2011/01/09掲載
Work figure (作品図)
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青銅の蛇

 (Serpente di bronzo) 1565-67年
840×520cm | 油彩・画布 | サン・ロッコ同信会館

16世紀イタリアで活躍したヴェネツィア派の巨匠ティントレットの代表作『青銅の蛇』。ヴェネツィアのサン・ロッコ同信会館大広間の天井へ旧約聖書の諸場面のひとつとして描かれた本作は、旧約聖書民数記21章に記される≪青銅の蛇≫を主題とした作品である。本作の主題≪青銅の蛇≫は、イスラエルの民がモーセに導かれ約束の地カナンを目指す途中、旅の厳しさによって不平が募り父なる神を冒涜するような言動が発せられるようになったことが原因で、父なる神より天上から炎の毒蛇が放たれ多くの民が死の罰を受けることとなったが、悔悛した民がモーセに毒蛇を取り去るよう神に祈りを捧げるよう願うと、モーセが父なる神より授かった言葉「蛇の像を造り、旗竿の先に掲げよ。毒蛇に噛まれても、それを見上げれば傷を癒えよう。」と伝え、青銅の蛇を造り旗竿の先に掲げた逸話で、本作中では画面最上部へ天上から炎の毒蛇を放つ父なる神、画面中間へ青銅の蛇の付いた旗竿を仰ぎ見るよう指示するモーセ、そして画面中部から下部にかけて毒蛇に咬まれながら必死に青銅の蛇を仰ぎ見るイスラエルの民が配されている。本作で特に注目すべき点は、高度な短縮法や遠近描写、明瞭な光と深い陰影による強い明暗対比などによる運動性の際立つ躍動的で劇的な場面表現にある。また父なる神部分、指示するモーセ部分、苦しむイスラエルの民部分がそれぞれ大きな三角形(※加えてイスラエルの民は対角的な斜十字によって小さな三角形が構成されている)に、さらに正しき父なる神とモーセ部分は逆向きの三角形を形成させることで、非行であったイスラエルの民部分との効果的な対比をおこなっている点も特筆に値する。なおティントレットはサン・ロッコ同信会館の装飾画を「聖クロスへの敬意と同信会(スクオーラ)への愛情を示す」という理由で大部分を無報酬で手がけたと伝えられている。


【全体図】
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炎の毒蛇を放つ父なる神。ヴェネツィアのサン・ロッコ同信会館大広間の天井へ旧約聖書の諸場面のひとつとして描かれた本作は、旧約聖書民数記21章に記される≪青銅の蛇≫を主題とした作品である。



【炎の毒蛇を放つ父なる神】
青銅の蛇を仰ぎ見よと指示を出すモーセ。本作で特に注目すべき点は、高度な短縮法や遠近描写、明瞭な光と深い陰影による強い明暗対比などによる運動性の際立つ躍動的で劇的な場面表現にある。



【指示を出すモーセ】
苦しむイスラエルの民。正しき父なる神とモーセ部分は逆向きの三角形を形成させることで、非行であったイスラエルの民部分との効果的な対比をおこなっている点も特筆に値する。



【苦しむイスラエルの民】

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