Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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ジョン・エヴァレット・ミレイ(ミレー) John Everett Millais
1829-1896 | イギリス | ラファエル前派




ラファエル前派を代表するイギリスの画家。歴史的・文学的主題を写実に基づく明るい色調と細密な手法で数多くの作品を手がける。中でもハムレットを典拠を得て制作した『オフィーリア』は同派の全作品の中でも屈指の傑作として知られている。1829年、裕福な階級層であったジョン・ウィリアム・ミレイの息子としてサウサンプトンに生まれ、11歳で史上最年少の画家としてRA(ロイヤル・アカデミースクール)に入学。以後、さまざまな賞を受賞。1848年ラファエル前派の創立メンバーとして1850年代後半に同派が解散するまで歴史画、宗教画を中心に次々と作品を制作した。その後、風俗的主題や肖像を通俗的に描き、イギリス人画家として富や栄誉、その地位を不動のものとした(1885年には画家として始めて准男爵の地位を得る)。1863年には出身校であるRAの会員、死去する直前の1896には(半年間であるが)同会の会長に就任したものの、同年ロンドンで死去。享年67歳。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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オフィーリア

 (Ophelia) 1851-52年
76.2×111.8cm | 油彩・画布 | テート・ギャラリー(ロンドン)

幾多数えられるラファエル前派の絵画の中でも、傑作中の傑作として知られるジョン・エヴァレット・ミレイ屈指の代表作『オフィーリア』。本作に描かれるのは世界で最も著名な劇作家のひとり(英国出身の)ウィリアム・シェイクスピアが手がけた四大悲劇≪ハムレット≫第4幕7章の一場面である。本場面は、デンマーク王子ハムレットが、父を毒殺して母と結婚した叔父に復讐を誓うものの、その思索的な性格のためになかなか決行できず、その間に恋人オフィーリアを狂死に追いやってしまう(オフィーリアは小川で溺死してしまう)という内容で、ラファエル前派の画家やヴィクトリア朝の画家たちは同画題の作品を数多く制作している。ミレイもそれに則り本作を手がけたのであるが、後に同じラファエル前派の画家ロセッティの妻となったエリザベス・シッダルをモデルに、細密な写実描写で表現される死した(又は死の直前の)オフィーリアの姿は、生と死の狭間にあってなお神々しいまでの美しさに満ちている。また本作の背景はサリー州ユーエルに程近いホッグスミル川の風景を元にして描かれているが、自然主義的な美的理念に基づき本背景の中に描写される草花には象徴的な意味が込められている(ヤナギは見捨てられた愛、イラクサは苦悩、ヒナギクは無垢、パンジーは愛の虚しさ、首飾りのスミレは誠実・純潔・夭折、ケシの花は死を意味している)。なお画家の強い要望によりモデルを務めたエリザベス・シッダルは湯の張られたバスタブの中でポーズを取り続けた為に、ある日、風邪を拗らせてしまい、モデルの父親から治療費の支払いを請求されたという逸話も残されている。

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【全体図】
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盲目の少女(盲目の娘)

 (The Blind Girl) 1854-56年
82.6×62.2cm | 油彩・画布 | バーミンガム市立美術館

ラファエル前派を代表する画家ジョン・エヴァレット・ミレイの傑作『盲目の少女(盲目の娘)』。1857年にリヴァプール・アカデミーの年間最優秀賞を受賞した本作は、画家の新居の近くに住んでいた少女(又は画家の妻エフィー)をモデルに、盲目の少女たちが雨上がりの牧草地で佇む情景を描いた作品である。画面中央(最近景)では盲目を思わせる少女が大地に腰を下ろし、雨上がりの空気や差し込む陽光の温もりを味わうかのように休んでいる。傍らにはさらに幼い少女が、盲目の少女に凭れ掛かっている。このような盲目の人物を描く場合、教訓的な内容や悲愴感などを観る者が明確に感じられるように表現するのが通例であるものの、本作に描かれる盲目の少女の己が背負う障害に対する態度は非常に穏やかであり、卑屈な雰囲気や戒告な様子は微塵にも感じられない。この二人の少女の屈託の無い子供らしさこそ、本作の最も大きな魅力のひとつであり、観る者を強く惹きつけるのである。また本作の大きな特徴である雨上がりの美しい風景は、近景をミレイが新居を構えたスコットランドのパースシャーの風景に、遠景をイングランド南東部イースト・サセックス州ライ近郊の小村ウィンチェルシーの風景に取材し描かれたことが知られており、この詩情性豊かな風景表現は、画面全体を包み込む明瞭な光の描写や、輝きに満ちた色彩表現、遠景で暗い雨雲の中にかかる二本の虹が大きな要因となっている。なお本作のモデルと推測されるミレイの新居の近くに住んでいた少女は、画家が同時期(1855-56年)に手がけた『枯れ葉(秋の葉、落ち葉)』でもモデルを務めている。

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Work figure (作品図)


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