Description of a work (作品の解説)
2010/08/16掲載
Work figure (作品図)
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カイロの反乱

 (The Revolt at Cairo) 1810年
356.2×499.7cm | 油彩・画布 | ヴェルサイユ宮美術館

18世紀フランスで活躍した新古典主義とロマン主義の折衷画家アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾンの重要な歴史主題作品『カイロの反乱』。1810年に制作された本作は、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトが1798年におこなったエジプト遠征(エジプト・シリア戦役)時における、オスマン帝国マムルーク軍との戦闘≪ピラミッドの戦い≫の場面を描いた作品である。本作に描かれる場面は高い戦闘力で知られていた頭領ムラード=ベイ(及びイブラヒム=ベイ)率いるマムルーク騎兵軍によるフランス軍への奇襲戦の様子が描き込まれているが、史実にも残されるようこの奇襲でフランス軍は陣形が崩されることなく、逆に撃退したとされており、本作でもマムルーク騎兵を駆逐する様子がありありと描写されている。画面中央より左側には前景として若く美しいフランス軍人が刀剣を振りかざしながらマムルーク騎兵軍に立ち向かう様子が描かれており、まるで古代の英雄を彷彿とさせるほど勇猛果敢な姿である。それと呼応するように画面前景右側にはフランス軍の統率された反撃に遭い、倒れたオスマン帝国のパシャ(高官)を抱きながら退くマムルーク騎兵が綿密に描写されている。ここで注目すべき点は敗者であるマムルーク騎兵の均整的な肉体描写や、さながら殉教者のように力なく崩れ落ちるパシャの姿に示される英雄性にあり、勝者と敗者をほぼ同格的に扱う表現はジロデの全作品の中でも特筆に値する。また主題や描写手法的に緻密な写実業者を用いた歴史画という古典主義的側面を持たせつつ、その表現は運動性が高く躍動感に溢れているほか、登場人物の行動や場面の様子なども極めて破壊的・暴力的であり、ロマン主義的な一面を強く感じさせる本作には画家の折衷主義がよく示されている。


【全体図】
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マムルーク騎兵に反撃するフランス軍。本作は、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトが1798年におこなったエジプト遠征(エジプト・シリア戦役)時における、オスマン帝国マムルーク軍との戦闘≪ピラミッドの戦い≫の場面を描いた作品である。



【マムルーク騎兵に反撃するフランス軍】
反撃に遭い退却するマムルーク騎兵。前景のフランス軍人と呼応するように画面前景右側にはフランス軍の統率された反撃に遭い、倒れたオスマン帝国のパシャ(高官)を抱きながら退くマムルーク騎兵が綿密に描写されている。



【反撃に遭い退却するマムルーク騎兵】
戦闘で死したマムルーク騎兵士。主題や描写手法的に緻密な写実業者を用いた歴史画という古典主義的側面を持たせつつ、その表現は運動性が高く躍動感に溢れているほか、登場人物の行動や場面の様子なども極めて破壊的・暴力的であり、ロマン主義的な一面を強く感じさせる本作には画家の折衷主義がよく示されている。



【戦闘で死したマムルーク騎兵士】

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