Description of a work (作品の解説)
2010/05/16掲載
Work figure (作品図)
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アタラの葬儀(アタラの埋葬)

 1808年
(Atala au tombeau, dit aussi Funérailles d'Atala)
207×267cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

18世紀後半に活躍した新古典主義とロマン主義の折衷画家アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾンを代表する作品『アタラの葬儀(アタラの埋葬)』。フランスにおいて最も重要なロマン主義文筆家のひとりであるフランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンが1801年に出版した小説≪アタラ≫の一場面を主題に、1808年に制作された本作は、同年のサロンに出品され、≪アタラ≫の作者自身は元より、シャトーブリアンと双璧をなす文人シャルル・ボードレールからも賞賛されたことでも知られている。本作の主題の元となった小説≪アタラ≫は、まだ未開の地であった17世紀のアメリカを舞台とし、スペイン人の混血でありキリスト教へと改宗した若き娘アタラが、母との間に立てた貞操を守り処女であることの誓いと、同地のインディアンである恋人シャクタスの野性的な魅力に惹かれてしまった己との狭間で葛藤と苦悩を抱き、遂には自ら命を絶ち恋人シャクタスの前で息をひきとるという物語で、本作では死したアタラの亡骸を修道士オブリーと共に洞窟内へ埋葬しようとする画面が描かれている。画面中央へ配された洞窟の入り口から射し込む陽光によって白く輝くアタラの両手には十字架が握らされておりアタラの(精神的な)純潔性が強調されているが、同時に包まれた白布に発生する衣襞で強調された細くしなやかな肢体には官能的な魅力が備わっている。さらにその官能性はアタラの脚を抱きながら嘆き悲しむ恋人シャクタスの雄々しい官能性と呼応しているかのようである。そして岩壁には本場面を説明するように旧約聖書ヨブ記に記される「これはなお青く、まだ刈られないのに、すべての草に先立ち枯れる」の一節が刻み込まれている。本作の宗教的精神性(※登場人物の行動や背景は元より、本場面は明らかに≪キリストの埋葬≫のイコノグラフ的解釈に基づいている)や高貴(純真)なる未開民族への礼賛感情、近代的な主題選択、そして異国情緒に溢れる場面描写やキアロスクーロ(明暗法)を用いた光彩表現などには、ジロデのロマン主義的性格が明確に示されている。


【全体図】
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柔らかい光に浮かび上がるアタラ。画面中央へ配された洞窟の入り口から射し込む陽光によって白く輝くアタラの両手には十字架が握らされておりアタラの(精神的な)純潔性が強調されているが、同時に包まれた白布に発生する衣襞で強調された細くしなやかな肢体には官能的な魅力が備わっている。



【柔らかい光に浮かび上がるアタラ】
嘆き悲しむシャクタスの姿。本作の宗教的精神性や高貴(純真)なる未開民族への礼賛感情、近代的な主題選択、そして異国情緒に溢れる場面描写やキアロスクーロを用いた光彩表現などには、ジロデのロマン主義的性格が明確に示されている。



【嘆き悲しむシャクタスの姿】
アタラを埋葬する修道士オブリー。シャトーブリアンが1801年に出版した小説≪アタラ≫の一場面を主題に、1808年に制作された本作は、同年のサロンに出品され、≪アタラ≫の作者自身は元より、シャトーブリアンと双璧をなす文人シャルル・ボードレールからも賞賛されたことでも知られている。



【アタラを埋葬する修道士オブリー】

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