Description of a work (作品の解説)
2009/12/06掲載
Work figure (作品図)
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ディアネイラを略奪するネッソス

 1755年
(L'enlèvement de Déjanire par le centaure Nessus)
157×185cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

18世紀後半のフランスを代表する画家ルイ=ジャン=フランソワ・ラグルネ(通称ラグルネ兄)初期の傑作『ディアネイラを略奪するネッソス』。1755年に王立絵画・彫刻アカデミーへ提出され、歴史画家として同アカデミーの会員資格を得ることとなったほか、同年の8月25日(王の祝祭日)にルーヴル美術館で開催されたサロンへも出品された本作は、古代ローマの偉大なる詩人オウィディウスの詩集≪転身物語(変身物語)≫に記される、ギリシア神話最大の英雄ヘラクレスの妻である美しき河神ディアネイラが、河の渡し守をしていたケンタウロスのネッソスに連れ去られようとしている場面≪ディアネイラを略奪するネッソス(ネッソスの誘拐)≫を主題に制作された作品で、画家が強く傾倒していた17世紀ボローニャ派の巨匠グイド・レーニも同主題の作品『ネッソスに略奪されるディアネイラ』を手がけている。画面中央下部にはヘラクレス夫妻を足止めする要因となった増水する川の擬人像(葦の葉の冠を被った老人)がネッソスの下半身にしがみ付いている姿が描かれているが、自らの水流に流され水瓶と櫂を手放してしまっている。そして画面中央には「まず私がディアネイラ様を対岸に渡し、次にあなた(ヘラクレス)を乗せて河を渡りましょう」と、この増水した河を渡る方法の提案者でもあるケンタウロスのネッソスがディアネイラを渡し終え、そのまま逃げようとする姿と、必死にもがき拒絶するディアネイラの姿が配されている。そして対岸では妻の危機を目撃し、手にした弓から今まさにネッソスへ向けて毒矢を放たんとする英雄ヘラクレスの姿が描き込まれている。本作の最も注目すべき点でもある、前遠景の対角的構図によって構成されるダイナミックで躍動感に溢れた登場人物の優美的表現や豊潤で輝くような豊かな色彩、滑らかな表面の仕上げなどは若き画家の優れた画才が良く表れており、今も観る者の眼を強く惹きつける。


【全体図】
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必死に抵抗するディアネイラの姿。本作は1755年に王立絵画・彫刻アカデミーへ提出され、歴史画家として同アカデミーの会員資格を得ることとなったほか、同年の8月25日(王の祝祭日)にルーヴル美術館で開催されたサロンへも出品された。



【必死に抵抗するディアネイラ】
ディアネイラを連れ去るネッソス。本作は古代ローマの偉大なる詩人オウィディウスの詩集≪転身物語(変身物語)≫に記される逸話≪ディアネイラを略奪するネッソス(ネッソスの誘拐)≫を主題に制作された作品で、ラグルネが強く傾倒していた17世紀ボローニャ派の巨匠グイド・レーニなど過去の画家たちも数多く同主題の作品を制作している。



【ディアネイラを連れ去るネッソス】
流れの速さを強調する転んだ川の擬人像。画面中央下部にはヘラクレス夫妻を足止めする要因となった増水する川の擬人像(葦の葉の冠を被った老人)がネッソスの下半身にしがみ付いている姿が描かれているが、自らの水流に流され水瓶と櫂を手放してしまっている。



【流れの速さを強調する転んだ擬人像】
ネッソスへ向けて毒矢を放たんとする英雄ヘラクレス。前遠景の対角的構図によって構成されるダイナミックで躍動感に溢れた登場人物の優美的表現や豊潤で輝くような豊かな色彩、滑らかな表面の仕上げなどは若き画家の優れた画才が良く表れており、今も観る者の眼を強く惹きつける。



【毒矢を放たんとする英雄ヘラクレス】

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