Description of a work (作品の解説)
2011/03/17掲載
Work figure (作品図)
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水からあがるヴィーナス(ヴィーナスの誕生)


(Vénus Anadyomène) 1807-1848年
163×92cm | 油彩・画布 | コンデ美術館(シャンティイ)

19世紀フランス新古典主義の偉大なる画家ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルを代表する神話画作品のひとつ『水からあがるヴィーナス(ヴィーナスの誕生)』。画家27歳となる1807年から構想(※素描も残されている)されていたものの、完成まで実に40年以上の歳月を要した本作は、愛と美と豊穣の女神で、ギリシア神話におけるアフロディーテと同一視される≪ヴィーナス(ウェヌス)≫を画題に女神の誕生の場面を描いた作品である。女神ヴィーナスは神々の最初の王としても知られる天空神ウラノスから滴った精液が海に落ち、その泡から誕生したとされており、本作では女神が泡から生まれ出でる光景が官能的に描かれている。画面中央に配される美の女神ヴィーナスは黄金に輝く長い髪を両手で柔らかく掻き揚げながら観る者へと視線を向けており、その無感情的ながら堂々としたその姿には美の女神としての神々しさを感じることができる。また片足(本作では左足)に重心をかけ(※コントラポスト)、さらに身体手足全体で大きなS字の曲線を形作る姿態で女神の裸体は描写されているが、本作で用いられる誇張的なS字曲線は女神の官能性をより強調する効果を発揮している(※比較参照:アングル作『泉』)。そしてヴィーナスの足元には愛の神アモール(別名キューピッド。ギリシア神話におけるエロスと同一視される)たちが無邪気な様子で纏わり付くように配されている。さらに後方へ目を向けてみると左側には夜明けを思わせる太陽が昇り、濃青の海がその陽光によってうっすらと輝いている。本作で前景に描かれる女神ヴィーナスと薄暗い背景の色彩的対比は、彼女の艶かしい官能性と共に特筆に値する出来栄えを示している。なお本作にはルネサンス三大巨匠のひとりで、画家自身多大な影響を受けていたラファエロ・サンツィオの『ガラティアの勝利』からの影響が指摘されている。

参照:オルセー美術館所蔵『泉』
参照:ラファエロ・サンツィオ作『ガラティアの勝利


【全体図】
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髪を掻き揚げる女神ヴィーナス。1807年から構想(※素描も残されている)されていたものの、完成まで実に40年以上の歳月を要した本作は、愛と美と豊穣の女神で、ギリシア神話におけるアフロディーテと同一視される≪ヴィーナス(ウェヌス)≫を画題に女神の誕生の場面を描いた作品である。



【髪を掻き揚げる女神ヴィーナス】
身体全体で構成されるS字曲線。画面中央に配される美の女神ヴィーナスは黄金に輝く長い髪を両手で柔らかく掻き揚げながら観る者へと視線を向けており、その無感情的ながら堂々としたその姿には美の女神としての神々しさを感じることができる。



【身体全体で構成されるS字曲線】
女神の足元へ寄り添う愛の神アモル。後方へ目を向けてみると左側には夜明けを思わせる太陽が昇り、濃青の海がその陽光によってうっすらと輝いている。本作で前景に描かれる女神ヴィーナスと薄暗い背景の色彩的対比は、彼女の艶かしい官能性と共に特筆に値する出来栄えを示している。



【足元へ寄り添う愛の神アモル】

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