Description of a work (作品の解説)
2007/05/10掲載
Work figure (作品図)
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ポール=マルリの洪水

 (Inondation à Port-Marly) 1876年
60×81cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

印象派の画家アルフレッド・シスレーの代表作『ポール=マルリの洪水』。本作はシスレーが1874年から移り住んでいたマルリー=ル=ロワの下を流れるセーヌ川沿いの村≪ポール=マルリ≫で1876年、雪解けの水により起こった川の大氾濫(洪水)を連作的に描いた6点の作品の中の1点である。画面中央には洗濯小屋を、画面左部に2階が「ア・サン・ニコラ」という宿屋になっているワイン商の家屋(この建物は現在はカフェとして使用されている)を、そして画面右部には岸に沿って垂直に生える栗の並木が描かれるほか、画面上部約2/3は広い雲域に覆われる空が画面を支配し、残りの画面下部約1/3は氾濫し水が溢れかえるセーヌ川の水面がポール=マルリの空模様を小波立ちながら映している。どんな日常にもある不安的要因として、予期しない出来事(本作では洪水)や外的要素によって、平穏な日常が破壊的に侵食され、変容してしまう姿を描いた本作であるものの、波立つ水面の筆触を感じさせる描写や、厚い雲間から射し込む陽光によって微妙に変化する色彩の自然的な表現は、観る者に強い印象を与えるだけでなく、王制(旧体制)の影響や痕跡が強く残るポール=マルリの街の歴史を刻む記録画的な作品としての側面もある。なお本作以外にポール=マルリの洪水を描いた作品では、本作の左斜めから見た視点で描かれる作品『ポール=マルリの洪水と小船(オルセー美術館所蔵)』や、本作とほぼ同様の視点・構図の作品『ポール=マルリの洪水時の波止場(ルーアン美術館所蔵)』、本作と逆の視点から上流方向を描いた作品『ポール=マルリの洪水(フィッツウィリアム美術館所蔵)』などが知られている。

関連:オルセー美術館 『ポール=マルリの洪水と小船』
関連:ルーアン美術館 『ポール=マルリの洪水時の波止場』
関連:フィッツウィリアム美術館 『ポール=マルリの洪水』


【全体図】
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氾濫したセーヌ川を進む小船。本作はシスレーが1874年から移り住んでいたマルリー=ル=ロワの下を流れるセーヌ川沿いの村≪ポール=マルリ≫で1876年、雪解けの水により起こった川の大氾濫を連作的に描いた6点の作品の中の1点である。



【氾濫したセーヌ川を進む小船】
入り口近くまで水面がくるワイン商の家屋。画面中央には洗濯小屋を、画面左部に2階が「ア・サン・ニコラ」という宿屋になっているワイン商の家屋(この建物は現在はカフェとして使用されている)を、そして画面右部には岸に沿って垂直に生える栗の並木が描かれている。



【洪水に見舞われたワイン商の家屋】
画面中央に描かれる洗濯小屋。波立つ水面の筆触を感じさせる描写や、厚い雲間から射し込む陽光によって微妙に変化する色彩の自然的な表現は、観る者に強い印象を与えるだけでなく、王制(旧体制)の影響や痕跡が強く残るポール=マルリの街の歴史を刻む記録画的な作品としての側面もある。



【画面中央に描かれる洗濯小屋】

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