Description of a work (作品の解説)
2008/05/17掲載
Work figure (作品図)
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愛撫

 (Caresses) 1896年
50.5×150cm | 油彩・画布 | ベルギー王立美術館

ベルギー象徴主義の指導者的存在であった大画家フェルナン・クノップフ最大の傑作『愛撫』。1898年に開催された第1回ウィーン分離派展への出品作である本作に描かれるのは、人間の頭部と獅子の肉体を持つ、神話上の生物≪スフィンクス≫が、男性とも女性とも受け取ることができる両性具有的な人物を愛撫する姿である。古代を思わせるやや荒廃的な風景の中、非常に端整な顔立ちの人物が右手に杖を持ち、寄り添うスフィンクスへと身体を預けているが、その表情は感情が示されず無表情的であり、視線は観る者へと向けられている。しかしこれは観者を見ているのではなく、両性具有的な人物が、そしてクノップフ自身が抱く幻想世界(夢)に向けられていると考えるべきであろう。一方、この両性具有的な人物を愛撫するスフィンクスは明らかに女性を思わせる顔立ちであり、その表情は享楽に耽る穏やかな感情が支配しているようである。画家自身の言葉によると、このスフィンクスの肉体は獅子(豹)ではなく、邪悪な生物とされる蛇に最も近い生物であるネコ科の哺乳類チーターであり、黄褐色と黒色の斑点模様や柔らかく曲線的な肉体的造形が、採用の最も大きな理由としている。またこの両性具有的な人物、スフィンクスは、顔面的特長が一致することから、双方とも画家の最愛の妹マルグリット・クノップフをモデルに描かれたことを容易に推測することができる。やや赤味がかった本作の穏健で調和的な色彩なども含め、本作の解釈については諸説唱えられているものの、一般的には支配への欲望(両性具有的人物)と、快楽への欲求(スフィンクス)との葛藤(争い)と考えられている。本作の類稀な夢想性・神秘性は後のシュルレアリスム(超現実主義)を先駆するものであり、この不可思議な幻惑性漂う本作は当時の人々に大きな戸惑いと衝撃を与えた。


【全体図】
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両性具有的な人物を愛撫するスフィンクス。1898年に開催された第1回ウィーン分離派展への出品作である本作に描かれるのは、人間の頭部と獅子の肉体を持つ、神話上の生物≪スフィンクス≫が、男性とも女性とも受け取ることができる両性具有的な人物を愛撫する姿である。



【登場人物を愛撫するスフィンクス】
本作に描かれる人物が手にする杖。やや赤味がかった本作の穏健で調和的な色彩なども含め、本作の解釈については諸説唱えられているものの、一般的には支配への欲望(両性具有的人物)と、快楽への欲求(スフィンクス)との葛藤(争い)と考えられている。



【本作に描かれる人物が手にする杖】
柔らかく曲線的な肉体的造形。画家自身の言葉によると、このスフィンクスの肉体は獅子(豹)ではなく、邪悪な生物とされる蛇に最も近い生物であるネコ科の哺乳類チーターであり、黄褐色と黒色の斑点模様や柔らかく曲線的な肉体的造形が、採用の最も大きな理由としている。



【柔らかく曲線的な肉体的造形】

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