Description of a work (作品の解説)
2010/12/25掲載
Work figure (作品図)
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奏楽の天使

 (Angeli musicabti)1480-83年頃
113×91cm | フレスコ | ヴァチカン宮美術館(ローマ)

15世紀イタリアで活躍した同時代の重要な画家メロッツォ・ダ・フォルリの代表作『奏楽の天使』。ローマ市のほぼ中心に位置するサンティ・アポストリ聖堂(聖使徒の意)の装飾画として、ローマ教皇シクストゥス4世の甥であった枢機卿ジュリアーノ・デラ・ローヴェレの依頼により手がけられた壁画『キリストの昇天』の一部である本作は、同壁画中央に描かれた主イエスの右足斜下に配されていた≪奏楽の天使≫の断片部分で、1711年に行われたサンティ・アポストリ聖堂の拡張工事によって壁画『キリストの昇天』は剥がされ、主題部のキリストの昇天部分がパラツィオ・デル・クイリナーレ(※そして現在は大統領官邸が所蔵している)へ、使徒や(本作を含む)天使部分はヴァチカンへ移されたという経緯があり、現在ヴァチカン宮美術館の所蔵となっている。本部分に描かれる天使はおそらくヴィオラであろう擦弦楽器を奏でつつ、主イエスを天上へと導く姿として描かれている。本作の原図壁画『キリストの昇天』に関しては現物を見た美術史家ジョルジョ・ヴァザーリが「昇天するイエスは中央に配され、周囲の天使らがイエスを天上へと導いている。イエスの姿は天井を穿つように見事な短縮法(ソット・イン・スー)で表現されている。また天使らも同様に表現され、その光景はまるで空中を舞い旋回しているかのようであった。さらに地上に描かれる使徒らも各箇所で卓越した短縮法が用いられており、この作品によって画家は大きな名声を得た」と伝えており、同時代から非常に評価されていたことを窺い知ることができる。また高揚し頬を赤く染める奏楽の天使の優美な姿や、細部まで描き込まれた衣服や楽器や翼の描写、瑠璃色(ウルトラマリン)の空と奏楽の天使との色彩的な対比なども特に優れた出来栄えを示している。

関連:ヴァチカン宮美術館所蔵『奏楽の天使(別ヴァージョン)』


【全体図】
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上方へと視線を向ける天使。本作はサンティ・アポストリ聖堂(聖使徒の意)の装飾画として、ローマ教皇シクストゥス4世の甥であった枢機卿ジュリアーノ・デラ・ローヴェレの依頼により手がけられた壁画『キリストの昇天』の一部である。



【上方へと視線を向ける天使】
細部まで丹念に描き込まれる天使。1711年に行われたサンティ・アポストリ聖堂の拡張工事によって壁画『キリストの昇天』は剥がされ、使徒や天使部分はヴァチカンへ移されたという経緯があり、現在ヴァチカン宮美術館の所蔵となっている。



【丹念に描き込まれる天使】
おそらくはヴィオラであろう天使が奏でる擦弦楽器。美術史家ヴァザーリが伝える「イエスの姿は天井を穿つように見事な短縮法(ソット・イン・スー)で表現されている。また天使らも同様に表現され、その光景はまるで空中を舞い旋回しているかのようであった」という言葉からもわかるよう、本作で用いられる画家の短縮法表現は当時から高い評価を受けていた。



【天使が奏でる擦弦楽器】
動物的な天使の翼。高揚し頬を赤く染める奏楽の天使の優美な姿や、細部まで描き込まれた衣服や楽器や翼の描写、瑠璃色(ウルトラマリン)の空と奏楽の天使との色彩的な対比なども特に優れた出来栄えを示している。



【動物的な天使の翼】

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