Description of a work (作品の解説)
2011/01/07掲載
Work figure (作品図)
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受胎告知

 (Annonciation) 1650年
寸法不明 | 油彩・画布 | トレド美術館

フランス古典主義の画家であり、名高き王立絵画・彫刻アカデミーの創立メンバーとしても知られるウスターシュ・ル・シュウール最晩年期の代表作『受胎告知』。本作は新約聖書ルカ福音書1:26-38に記される有名な≪受胎告知≫を主題として制作された作品である。本作の主題≪受胎告知≫は、ガリラヤ湖近郊ナザレ(現イスラエル北部地区の都市)に滞在していた聖母マリアの下へ父なる神より遣わされた大天使ガブリエルが天より訪れ、戸惑うマリアに向かい「恵まれし方、主が貴女と共におられる。恐れることはない。貴女は身ごもり男児を産む。その子にイエスと名付けよ。その子は聖なる者、神の子と呼ばれる」と懐胎の言葉を伝え、マリアが「どうしてそのようなことがあり得ましょう。私はまだ男性を知りません」と戸惑いの告白を述べると、続いて「聖霊が貴女に降りる。神にできぬことはない」と告げた、マリアも神の意思を理解し承服する場面で、旧約聖書イザヤ書(※預言者イザヤによるメシア=救世主に関する予言書)の成熟と解釈される、教義上最も重要な場面のひとつとして認知されている。画面左側に神の子イエスの懐姙を聖告する大天使ガブリエルを、画面右側にそれを厳粛に受け入れる聖母マリアを配し、真横からの視点で描かれる本作の構図は≪受胎告知≫の絵画としては極めて古典的であり、その安定的で規律正しく厳格な構成にはル・シュウールの古典主義性がよく表れている。しかし本作でより注目すべき点は、軽快で鮮やかな色彩と大天使ガブリエルの神秘的な浮遊感との調和性にある。特に左手で(主題のアトリビュートである)白百合を持ち、右手で天上から放たれる父なる神の威光(及び明確な意思)を指し示す大天使ガブリエルの動性と静性が絶妙に混在した姿態描写は、大理石の彫像のように動きのない聖母マリアや、静謐さが際立つ全体の情景と見事に調和し、まるでこの奇跡の瞬間を切り取ったかのような霊妙の場面へ現実感すら与えることに成功している。


【全体図】
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神の子イエスの受胎を受け入れる聖母マリアの敬虔な姿。本作は新約聖書ルカ福音書1:26-38に記される有名な≪受胎告知≫を主題として制作された作品で、その安定的で規律正しく厳格な構図・構成にはル・シュウールの古典主義性がよく表れている。



【受胎を受け入れる聖母マリア】
マリアへ聖告する大天使ガブリエルの神々しい姿。左手で(主題のアトリビュートである)白百合を持ち、右手で天上から放たれる父なる神の威光(及び明確な意思)を指し示す大天使ガブリエルの動性と静性が絶妙に混在した姿態描写は白眉の出来栄えである。



【聖告する大天使ガブリエル】
父なる神の意思を示す威光。大天使の描写は、大理石の彫像のように動きのない聖母マリアや、静謐さが際立つ全体の情景と見事に調和し、まるでこの奇跡の瞬間を切り取ったかのような霊妙の場面へ現実感すら与えることに成功している。



【父なる神の意思を示す威光】

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