Description of a work (作品の解説)
2007/03/21掲載
Work figure (作品図)
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恋文

 (Liebesbrief) 1670年頃 (1669-1671年頃と推測)
44×38.5cm | 油彩・画布 | アムステルダム王立美術館

17世紀オランダを代表する風俗画画家ヨハネス・フェルメールの様式発展(転換)の作品のひとつ『恋文』。本作は画家の作品ではお馴染みのシターン(雫型の共鳴体を持った中世の撥弦楽器)と手紙を持つ女と、傍らに侍女を配した風俗画のひとつであるが、画面中央下部の床のサンダルや箒、画中画として侍女の背後の壁に掛けられる帆船の海景図など、あからさまな寓意的要素が示されている点や、女性らが居る部屋とは別の部屋から覗いているかのような複雑な空間構成が用いられている点など、それまでの画家の作品には見られない変化が顕著に示されているのが最も大きな特徴である。この複雑な構図・空間構成はこの時期には比較的珍しいものではなく、直接的な典拠は同時代の風俗画家ピーテル・デ・ホーホ作『男と女と鸚鵡(オウム)』などの作品から得ていたことが推測されている。また床のサンダルや立てかけられた箒、帆船が行き交う海景図は恋愛情事の寓意として知られており、ここまで明確に寓意的象徴物を画面内へ描いていることは、画家の様式的変化の決定的な表れであり、これらのことから本作は侍女がシターンの女に恋文を届けたと解釈されるほか、シターンの女性の鋭角的な衣服の描写や侍女のやや単純化された人物表現などにもフェルメールの技巧的変化が見られるのである。なお本作は1971年9月にブリュッセルでおこなわれた展覧会で盗難に遭い13日後に犯人の自室で発見されるが、カンヴァスから絵具が剥落するなど深刻な破損が発生しており、完全な修復が完了したのは盗難から約一年経った後であった。

関連:ピーテル・デ・ホーホ作 『男と女と鸚鵡(オウム)』


【全体図】
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侍女から手紙を受け取るシターンの女。この複雑な構図・空間構成はこの時期には比較的珍しいものではなく、直接的な典拠は同時代の風俗画家ピーテル・デ・ホーホ作『男と女と鸚鵡(オウム)』などの作品から得ていたことが推測されている。



【侍女から手紙を受け取るシターンの女】
手紙を渡す侍女。床のサンダルや立てかけられた箒、帆船が行き交う海景図は恋愛情事の寓意として知られており、ここまで明確に寓意的象徴物を画面内へ描いていることは、画家の様式的変化の決定的な表れであり、これらのことから本作は侍女がシターンの女に恋文を届けたと解釈されている。



【手紙を渡す侍女】
床に配されるサンダル。本作は1971年9月にブリュッセルでおこなわれた展覧会で盗難に遭い13日後に犯人の自室で発見されるも、画布から絵具が剥落するなど深刻な破損が発生しており、修復が完了したのは盗難から約一年経った後であった。



【床に配されるサンダル】

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